最低賃金 (アメリカ)

アメリカ合衆国の最低賃金制度について

1. 概要

アメリカでは、1948年に制定された[公正労働基準法]に基づいて、連邦政府が最低賃金を定めています。現在の連邦最低賃金は時給7.25ドルですが、各州は独自に最低賃金を設定することができ、州ごとに異なる金額が適用されています。連邦の最低賃金よりも高い州が約30州に及び、特にカリフォルニア州やニューヨーク州などでは15ドル以上の最低賃金が設定されています。

2. 州別の状況

最低賃金は、州によって異なる状況が見られます。例えば、2024年にはカリフォルニア州の最低賃金が時給15.50ドルになるとされ、さらに2024年以降はインフレに応じて調整される予定です。一方で、最低賃金が設定されていない州もあり、合計で5州に上ります。

2.1 連邦最低賃金の影響

2019年調査によると、アメリカで最低賃金を受け取る労働者の約90%が、連邦最低賃金を超える時給を支給されています。アメリカ国内の平均時給は11.80ドルで、特に強力な賃金引き上げ運動が進行中です。中でも、Fight for $15運動が注目されており、多くの州や市で15ドルへの引き上げが実現しています。

3. チップ労働者

チップを受け取る職種においては、連邦政府が定める最低賃金が時給2.13ドルとされ、実質的に非常に低い補償となっています。また、法律ではチップが最低賃金に達しない場合、雇用主がその差を補うことが要求されていますが、実際には遵守されていないケースがあるのが現状です。

4. 最低賃金を巡る歴史

4.1 初期の背景

最低賃金制度が最初に導入されたのは、州レベルでのことでした。1912年にマサチューセッツ州で最初の制度が設けられ、当初は若年者や女性のみを対象としたものでした。1960年代に入ると、議論は再燃し全米で最低賃金の導入が進みました。

4.2 世界恐慌とその後

1930年代の世界恐慌を契機に、賃金の底上げが求められるようになり、1938年には連邦最低賃金が制定されました。その後、様々な法改正を経て、現在に至ります。

5. 現代の運動と動向

5.1 Fight for $15運動

2012年に始まったこの運動は、アメリカ全国で最低賃金を15ドルへ引き上げることを求めるもので、デモやストライキを通じて広がりました。特定の州や都市では、この運動の影響を受けて15ドル以上へ引き上げるケースが見られます。

5.2 政府との連携

近年では、政府契約業者に対しても最低賃金が定められるようになり、2022年以降はさらに強化される予定です。

6. 課題と展望

6.1 雇用への影響

最低賃金引き上げに対する意見は分かれています。賛成派は所得の向上や経済成長を促進すると主張する一方、反対派は雇用機会の減少や企業の経済負担を指摘しています。実際のところ、適切な価格引き上げは経済にポジティブな影響を与える一方で、雇用に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。

6.2 今後の展望

今後も、多くの州で最低賃金を段階的に引き上げる動きが続くと見られています。また、物価スライド制度の導入など、一層の制度改善が求められています。加えて、労働者の権利保障や生活水準向上のための取り組みも不可欠です。

7. 結論

アメリカ合衆国における最低賃金は、各州の経済状況や政治的背景によって大きな違いが見られます。今後も地域による格差や制度の運用方法が重要な課題として残ります。特に、最低賃金労働者の権利を守るための努力が続けられることが期待されます。

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