最大需要電力

最大需要電力（さいだいじゅようでんりょく）

最大需要電力とは、電力会社が電気料金、特に基本料金を計算する際に基準とする値で、一般的に「デマンド値」としても知られています。これは、契約している電力需要家が一定の時間帯（通常30分間）に消費した電力の平均値のうち、その期間（通常1ヶ月間）で最も高い値を指します。

概説

発電所や送変電設備といった電力供給インフラは、需要家が平均的に使用する電力量だけでなく、一時的に発生する大きな電力消費にも対応できる設計が必要です。瞬間的に大量の電力が消費されると、設備に過大な負荷がかかり、供給の安定性が損なわれる可能性があるためです。そのため、特に多量の電気を使用する事業者など、いわゆる大口需要家に対しては、「最大需要電力計」（デマンド計）が設置され、これに基づいて電力取引が行われています。

計測方法

最大需要電力は、専用の電力計を用いて計測されます。主に以下の二種類がありました。

積算形: 標準的な電力計に最大需要表示機能を付加したものです。一定期間（例：30分）の積算電力量から平均電力を算出し、その期間の最大値を記録します。
熱形: 電流によって発生する熱を利用し、バイメタルの変形を通じて指針を動かす方式です。瞬間的な変動ではなく、一定時間継続する電力の大きさに反応するため、設備の熱的な許容度を考慮した計測に適していましたが、現在はあまり使用されていません。

日本では、電力会社はデマンド計を用いて、通常30分ごとに区切られた時間帯における電力使用量の平均値（kW）を継続的に計測しています。そして、その月のすべての計測値の中で最も大きい値が、その月の最大需要電力、すなわちデマンド値として記録されます。

日本における電気料金への影響

日本の電気料金は、主に使用した電力量に応じて変動する「電力量料金」と、使用量に関わらず固定でかかる「基本料金」の合計で構成されます。この基本料金は、契約の種類や電力会社によって定められた単価に「契約電力」を乗じて算出されます。最大需要電力は、この「契約電力」の決定に深く関わってきます。

高圧受電500kW未満の契約

契約電力が500kW未満の場合、その月の最大需要電力と、過去11か月分の最大需要電力の中で最も高い値が「契約電力」と見なされます。この値が翌月からの1年間の基本料金算定基準となるため、たとえ一瞬でも高いピーク電力（デマンド値）が発生すると、その後1年間の電気料金に影響を与え続けることになります。したがって、電気料金の削減には、最大需要電力を抑える（ピークカット）ための対策が非常に重要となります。

高圧受電500kW以上の契約

一方、契約電力が500kW以上の場合は、個別に電力会社と協議して契約電力が定められます。この契約電力を超える最大需要電力を記録した場合、その超過分に対して基本料金率が乗じられた金額が、実質的な違約金として請求される可能性があります。さらに、最大需要電力が契約電力を超過した場合は、今後の契約電力を見直すための協議が必要となる場合もあります。

欧州の動向

欧州では、単一欧州議定書以降の電力自由化の進展に伴い、電力供給能力（アデカシー）の評価方法が見直されています。従来は自国内の発電能力と最大需要に基づいていましたが、国境を越えた国際連系線を通じた供給能力を考慮した評価への転換が議論されています。これは、供給信頼性を多国間の視点から評価する上で最大需要電力の捉え方にも影響を与える可能性があります。

最大需要電力は、単に電力量を多く使うかどうかの指標だけでなく、電力インフラの設計思想、料金体系、そして安定供給の確保といった多岐にわたる側面に関わる重要な概念です。

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