バイメタル

バイメタル：温度変化を力に変える精密部品

バイメタルは、熱膨張率の異なる2種類の金属板を一体化させた素材です。温度変化によって生じる金属間の膨張差を利用し、様々な機器の動作を制御する重要な役割を担っています。

バイメタルの誕生と歴史

バイメタルの発明は、1750年頃、高精度の時計開発に携わっていたジョン・ハリソンという時計職人まで遡ります。彼は、時計の精度を高めるための工夫として、この素材に着目したのです。その後、その特性が広く認識され、様々な分野に応用されるようになりました。

バイメタルの素材と製造

バイメタルは通常、鉄とニッケルの合金にマンガン、クロム、銅などの元素を添加して作られます。熱膨張率の異なる2種類の合金を冷間圧延によって精密に貼り合わせる高度な技術が必要とされます。長期間の使用に耐えるためには、素材の選定と製造工程における高い品質管理が不可欠です。

特に、熱膨張率の小さい合金としてインバーが用いられることが多くあります。インバーは、1896年にC・E・ギョームが発見したニッケル36%、鉄64%の合金で、室温付近では熱膨張率がほぼゼロという特異な性質を持っています。この画期的な発見により、ギョームは1920年にノーベル物理学賞を受賞しました。

バイメタルの主な用途

バイメタルは、その温度変化による変形特性を生かし、幅広い用途で活躍しています。代表的な用途としては以下が挙げられます。

温度計: バイメタルの温度変化による曲がり具合を指針に転換することで、温度を計測します。壁掛け型の室内温度計や、水温計、土壌温度計など、様々な種類の温度計に使用されています。

サーモスタット: 温度に応じて電気回路のオンオフを切り替える装置です。こたつ、アイロン、かつては炊飯器など、温度を一定に保つ必要がある電化製品に広く用いられてきました。近年では、より高精度なサーミスタによる温度検知方式への移行が進んでいます。

点灯管: 蛍光灯の点灯時に、安定器に高電圧を発生させる役割を果たします。温度上昇によってバイメタルの曲率が変化する性質を利用し、グロー放電による加熱と冷却を繰り返すことで、高電圧の発生を制御します。

自動点滅電球: フィラメントの近くに設置されたバイメタルが温度上昇によって電流を遮断することで、点滅を繰り返します。クリスマスツリーの装飾用電球などで利用されてきました。

ポップアップトースター: 焼き上がりを検知し、トーストを飛び出させる機構に使用されています。バイメタルが設定温度に達すると、電源を遮断すると同時に、ばね仕掛けでトーストが押し上げられます。

方向指示器（旧式）: かつてはウインカーリレーに用いられ、点滅制御に使用されていましたが、現在では電子制御式に取って代わられています。

サーマルリレー: 電気機器の過負荷を検知し、保護するための装置です。バイメタルにヒーターを取り付け、過負荷による温度上昇を検知して回路を遮断します。

バイメタルのその他の用途

「バイメタル (bimetal)」は、文字通り「2種類の金属」を意味します。その特性を利用した用途以外にも、2種類の金属を組み合わせることで、より優れた機能を持たせることができます。

バイメタル貨: 異なる金属を組み合わせた貨幣です。偽造防止効果を高める目的で、高額硬貨や記念硬貨などに用いられることがあります。

* バイメタルソー: 刃部に高速度鋼、峰部にばね鋼などの異なる金属を使用することで、耐久性と靭性を兼ね備えたノコギリを実現しています。金切鋸などに使用されています。

まとめ

バイメタルは、一見シンプルな素材ですが、その特性を活かした応用は多岐に渡り、現代社会の様々な機器に欠かせない存在となっています。今後もその優れた特性を生かした新しい用途開発が期待されます。

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