最後の一葉 (太田裕美の曲)

最後の一葉（さいごのひとは）

「最後の一葉」は、日本のシンガーソングライターである太田裕美によって、1976年9月にリリースされた通算5枚目のシングルレコードに収録された楽曲です。

太田裕美は、1974年にシングル「雨だれ」でデビューして以来、その清純な歌声と、自らピアノを演奏しながら歌うスタイルで注目を集めていました。この「最後の一葉」も、デビュー曲「雨だれ」と同様に、彼女自身のピアノ演奏をフィーチャーした作品であり、大きな商業的成功を収め、彼女の初期キャリアを代表するヒット曲の一つとなりました。

楽曲の背景

この楽曲のタイトル、そしてその物語の根底にあるのは、アメリカの著名な作家であるO・ヘンリー（オー・ヘンリー）による同名の短編小説「最後の一葉」（The Last Leaf）です。

小説は、貧しい芸術家たちが集まるアパートを舞台に、肺炎で死の床にある画家志望の若い女性ジョンジーが、窓の外の壁に絡まる蔦の最後の葉が落ちたら自分も死ぬと信じ込む物語です。隣室に住む老画家ベアマンは、その話を聞いて決意し、嵐の夜に壁に一枚の葉を描き加えます。ジョンジーはその絵を本物の葉と信じ、落ちない葉に励まされて回復しますが、ベアマンは風邪をこじらせて亡くなってしまいます。

この悲しくも感動的な隣人愛の物語からインスピレーションを得て、作詞家の松本隆が歌詞を書き下ろしました。松本隆は、当時の日本のポップスシーンにおいて、文学的で繊細な言葉遣いと独特の世界観を持つ詞で知られており、この楽曲においても、原作小説の持つ抒情性や儚さ、そしてかすかな希望といったテーマが巧みに表現されています。筒美京平が手掛けたメロディは、物悲しくも美しい旋律で、楽曲全体の雰囲気を深く彩っています。筒美京平は、数多くのヒット曲を生み出した日本を代表する作曲家であり、その卓越したメロディメイキング能力がこの楽曲でも遺憾なく発揮されています。そして、編曲を担当したのは萩田光雄です。萩田光雄は、太田裕美の多くの楽曲を手掛けており、特にピアノの響きを活かしたアレンジは、太田裕美の個性と楽曲の世界観を見事に融合させています。

太田裕美自身のピアノによるイントロから始まり、彼女の透明感のある歌声とピアノの旋律が紡ぎ出す世界は、聴く者に深い感動と共感を与えました。当時の日本の音楽シーンでは、アイドル歌謡やフォーク、ニューミュージックなど多様なジャンルが台頭していましたが、太田裕美のこのスタイルは、そのどれとも異なる独自の立ち位置を確立しており、「最後の一葉」はその象徴的な楽曲の一つと言えます。

シングル詳細

このシングルレコードには、A面に「最後の一葉」が、B面には「銀のオルゴール」が収録されています。

A面

最後の一葉（さいごのひとは）
演奏時間: 3分39秒
作詞: 松本隆
作曲: 筒美京平
編曲: 萩田光雄

B面

銀のオルゴール（ぎんのオルゴール）
演奏時間: 3分05秒
作詞: 松本隆
作曲: 筒美京平
編曲: 萩田光雄

B面に収録された「銀のオルゴール」も、A面と同じ制作陣によって手掛けられており、シングルの世界観を補完するような作品となっています。A面、B面ともに、松本隆の詩的な詞と筒美京平の普遍的なメロディ、そして萩田光雄の緻密なアレンジが、太田裕美の歌唱とピアノ演奏によって表現されています。

その後の影響と関連作品

「最後の一葉」は太田裕美の代表曲として、その後も多くのベストアルバムやコンピレーション盤に収録されています。

『GOLDEN J-POP/THE BEST 太田裕美|GOLDEN J-POP_THE BEST 太田裕美』
『GOLDEN☆BEST 太田裕美 コンプリート・シングル・コレクション』

これらのアルバムを通じて、世代を超えて多くの音楽ファンに聴かれ続けています。また、この楽曲がリリースされた1976年は、日本のポップスが多様化し、ニューミュージックが確立されていく重要な時期であり、そうした音楽史の中においても「最後の一葉」は、その文学的な背景とアーティストの個性的な表現スタイルによって、特筆されるべき一曲と言えるでしょう。太田裕美のキャリアにおける重要なターニングポイントとなった作品であり、彼女の音楽性を語る上で欠かせない楽曲の一つです。

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