最後の挨拶

概要

『最後の挨拶』（さいごのあいさつ、His Last Bow）は、イギリスの作家アーサー・コナン・ドイルが著した短編小説であり、シャーロック・ホームズシリーズの中での重要な作品です。この物語は、全56編の短編小説の中で44番目に発表され、初めて登場したのは1917年9月、イギリスの『ストランド・マガジン』とアメリカの『コリアーズ・ウィークリー』であり、同年に発行された『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』に収められています。特に、シリーズの中でのこの作品は、ホームズの最後の事件として位置付けられている点が注目されます。

あらすじ

物語は、第一次世界大戦の開戦を目前に控えたイギリスの郊外が舞台となります。ドイツのスパイであるフォン・ボルクは、フォン・ヘルリンク伯爵と会合し、翌日にイギリスを離れる準備を整えています。この時、フォン・ボルクは仲間のスパイ、アルタモントから重要な情報を得るための連絡を受け取ります。アルタモントはアイルランド系アメリカ人で、イギリス海軍の暗号簿を入手したと報告していました。彼は、その仕事に対して500ポンドの報酬が約束されています。

会合が終わり、フォン・ヘルリンク伯爵が帰った後、アルタモントが自動車でやってきます。彼は約束通り暗号簿の包みを持参し、自身の仲間が次々と逮捕されていることを訴え、危険が迫っていると伝えます。この時、フォン・ボルクはアルタモントにロッテルダムを経由してアメリカへ渡るよう勧め、暗号簿の包みを受け取りました。しかし、開けてみると中身は「ミツバチの飼育法」という本であり、フォン・ボルクは驚きます。その瞬間、アルタモントはクロロホルムを嗅がせて彼を気絶させ、縛り上げました。実はアルタモントの正体は、他でもないシャーロック・ホームズだったのです。

ホームズの作戦

ホームズはひそかにスパイの役を演じ、イギリス政府からの依頼を受けて活動していました。彼は過去の事件からの引退を決めていましたが、特別な事情から戻ってきたのです。さらに、フォン・ボルクの屋敷にはホームズの仲間である女中がいて、フォン・ボルクの電報や郵便に関するすべての動きがホームズの手に握られていました。

ホームズはフォン・ボルクの自動車に乗せて屋敷を後にしますが、その際に彼は「われわれの大砲が想像していたよりも大きく、軍艦が予想もしない速さで航行したら、敵は驚くだろうね」と語ります。この言葉からも、彼の鋭い洞察力と戦略的思考が垣間見えます。

登場人物

• - フォン・ボルク: ドイツのスパイであり、優れた情報収集能力を持っている。イギリス人に対しても良好な印象を与えるスポーツマン。
• - フォン・ヘルリンク伯爵: ドイツ大使館の書記局長であり、フォン・ボルクの秘密を知る数少ない人物。
• - アルタモント: アイルランド系アメリカ人で、フォン・ボルクに情報を提供するスパイ。
• - シャーロック・ホームズ: 名探偵であり、引退後は郊外で養蜂を営んでいたが、政府の依頼でスパイ逮捕に乗り出す。
• - ジョン・H・ワトソン: ホームズの親友で、久しぶりに呼び出されてスパイの逮捕に同行する。

この短編小説は、シリーズの完結を印象付けるものであり、ホームズの魅力を再確認させる作品となっています。

もう一度検索