アイルランド系アメリカ人

アイルランド系アメリカ人について

アイルランド系アメリカ人、すなわちアメリカ合衆国に住むアイルランド出身の人々は、おおよそ3,600万人に達し、国内の人口の約12%を占めています。この多様なコミュニティの中には、アイルランドからの移民やその子孫が含まれていますが、スコッツ＝アイリッシュと呼ばれるプロテスタント系の移民は別のカテゴリとして扱われることが一般的です。スコッツ＝アイリッシュは、アルスターからアメリカに移住したアイルランド人で、彼らの中にはアイルランド系アメリカ人としての自覚を持つ者も多くいます。

アイルランド移民の歴史

アイルランド系アメリカ人の歴史は、18世紀から19世紀にかけての移民の波に始まります。特に、産業革命の影響を受けて多くのアイルランド人がアメリカの辺境地へと進出しました。彼らは、ペンシルベニア州やバージニア州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州に定住し、労働力としての役割を果たしました。1845年から1849年にかけて発生したジャガイモ飢饉により、さらに多くのカトリック教徒が北アメリカに移住しました。この移民の多くは、病気が蔓延する困難な船旅を経てアメリカにたどり着き、一部はカナダに留まりアイルランド系カナダ人となりました。

1820年から1860年にかけて、アイルランド人はアメリカ国内の移民の1/3を占め、特に1840年代には移民の半数を占めるに至りました。しかし、彼らはカトリック教徒であったため、歴史的にはイングランド系ルーツを持つアメリカ人から差別を受けることが多く、アイルランド系の人々を受け入れないというスタンスの店舗も存在しました。このような差別に直面したアイルランド系移民の中には、マフィアとしての道を選ぶ者もいました。

職業と文化

アイルランド系移民は、当初は主に警察官や消防士、軍人として働くことが多く、その背景には、移民としての立場やアイルランド人の特性が影響しています。映画やテレビでは、アイルランド系の警官や消防士が描かれることがよくあります。なお、ニューヨーク市の警察や消防では、式典でバグパイプ隊が演奏されるなど、アイルランド文化が色濃く残っています。

さらに、アイルランド系アメリカ人の姓には「O'」「Mc」「Mac」が多く見られます。これらの接頭辞は、アイルランドの公用語であるアイリッシュ・ゲーリックにおいて、家系や子孫を示す意味があります。たとえば、「Mc」は「誰々の子」を意味します。このような姓の伝統は、アイリッシュのアイデンティティの象徴でもあります。

現代のアイルランド系アメリカ人

21世紀には、アイルランド系アメリカ人が完全にアメリカ社会に同化している一方で、彼らはアイリッシュとしての自認を持ち続けていることが多いです。特に聖パトリックの日には、アメリカ各地で盛大に祝われ、アイリッシュの伝統と文化が体現されています。この背景には、アイルランド系アメリカ人が持つ独自の誇りと、その歴史的な影響が色濃く反映されています。

有名なアイルランド系アメリカ人には、ジョン・F・ケネディやビル・クリントンなどの政治家、ジョージア・オキーフのようなアーティスト、さらにスポーツ界にも多くのアイルランド系の著名人が存在します。彼らはそれぞれの分野で成功を収め、アメリカ社会におけるアイルランド系アメリカ人の存在感を示しています。

今日、アイルランド系アメリカ人はそのルーツを大切にしつつも、アメリカ社会において重要な役割を果たし続けているのです。

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