月と湖

月と湖

芦原妃名子による漫画作品『月と湖』は、2007年に『ベツコミ』に掲載され、同年には単行本として出版されました。本作は、主人公の一菜が亡き祖父の未発表の私小説を通じて、彼の過去を紐解いていく成長物語です。

あらすじ

一菜は、かつて小説家として名を馳せた祖父の私小説『月と湖』が残されていることを知ります。祖父は有名な愛妻家でありながら、彼の遺した小説には愛人への密やかな想いが描かれていました。一菜は、忘れられた祖父の一面を知るために、祖母からの頼まれごとでその愛人、水橋透子の元へと向かうことになります。

透子の家に辿り着いた一菜が出会ったのは、想像していたような「日陰の女」とは異なり、元気に農作業をしている艶やかな高齢の女性でした。透子は一菜に働きかけながら、次第に彼女の祖父との関係や、秘めた想いについての真実が浮かび上がってきます。読んでいなかった祖父の小説『月と湖』を読み進める過程で、一菜は彼の複雑な感情と自身の状況を重ね合わせていきます。

12月のノラ

もう一つの短編作品「12月のノラ」には、早絵とお隣の親友、なっちゃんとの物語が描かれています。この物語は、子供たちの無邪気な冒険心や、友情の儚さを表現しています。早絵は、豪華な家に住むなっちゃんと親友であるがゆえに、彼女がフリルのドレスに閉じ込められていることを懸念し、屋外冒険に誘います。

二人は外に出て、黒猫に遭遇し、その猫をノラと名付けて可愛がることにします。しかし、彼女たちの冒険がやがてなっちゃんのお母さんに発覚し、二人の友情には試練が訪れます。事態が一転し、なっちゃんの家が火事で全焼し、彼女だけが行方不明となってしまいます。

月日が経ち、早絵は成長し、16歳になっています。ある日、ノラに似た猫を見かけたことをきっかけに、同じく猫を探している少年ヒロキと出会います。この出会いが、早絵にとって何か特別な意味をもたらし、彼女の心に新たな扉を開くことになります。

このように、『月と湖』と「12月のノラ」では、それぞれの物語がリレーションしつつ、登場人物たちが抱える複雑な人間関係や思いを丁寧に表現しています。芦原妃名子のフィルターを通じて、愛、友情、そして成長のテーマが描かれており、読者に深い感動を与えています。

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