月光のスティグマ

月光のスティグマ

『月光のスティグマ』は、中山七里による恋愛サスペンス小説で、2013年から2014年にかけての新潮社の小説誌『yom yom』に連載され、2014年12月22日に単行本として発刊されました。この作品は、「ラブストーリーをお願いします」という出版社からの要望からスタートしていますが、作者自身は恋愛小説をあまり好んで読まない背景を持っています。

本作では、表面的には恋愛を描くものの、その内容は単なる恋のもつれではなく、仕事や対立を背景にした複雑な人間関係を描写しています。特に、つかみどころがない“女性”の存在を際立たせるために、一人の男性が双子の姉妹に翻弄される姿が描かれています。

登場人物と物語の舞台

物語の中心となるのは、美しい双子の姉妹、八重樫麻衣と優衣です。幼なじみの神川淳平は、彼女たちの顔を見分けることができる唯一の存在であり、彼の心の中には彼女たちを守りたいという強い決意が根付いています。幼少期に襲われた変質者の事件が、彼の心に深い傷を残しており、二人を守ることが彼の使命となります。

高校生になる頃、淳平は妹の優衣に恋をし、同じ気持ちを告白されることで二人は交流を深めます。しかし、姉の麻衣も複雑な思いを抱えていました。物語は重たいテーマを扱っており、特に1994年の阪神淡路大震災によって、彼らの運命が大きく変わります。淳平は、麻衣の兄省吾が刺される現場を目撃しますが、逃げ出してしまい、事件の真相を誰にも話せないままになります。

震災後、彼と優衣は別々の家族に引き取られ、連絡を取れない状態が続きますが、時間が経つにつれ、淳平は東京で検察官となります。ここで物語は再び動き出し、優衣との再会を果たしながらも、彼女が関与している可能性のある複雑な事件に巻き込まれていきます。

終盤の緊迫感

物語が進むにつれ、淳平は優衣の周囲にいる是枝孝政といった政治家たちが持つ闇を探ることになります。彼は震災孤児育英会に潜入し、優衣と再会しますが、彼女の背景にある事情や彼女の心の中で葛藤が，次第に複雑に絡み合います。子供時代の記憶や震災の影響が彼らの運命をどう変えるのか、緊迫した展開が続きます。

中山七里は、単なる恋愛小説の枠を超え、社会問題や人間関係の深みを描くことで、読者を引き込む独特のストーリーを創り上げています。『月光のスティグマ』は、個々のキャラクターが持つ重い過去や感情を浮き彫りにし、最後まで目が離せない物語を展開することで、読者を魅了し続ける作品となっています。

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