月経前不快気分障害

月経前不快気分障害（PMDD）

月経前不快気分障害（PMDD）は、月経前症候群（PMS）とは異なり、特に精神的な症状が顕著で深刻な状態を指します。PMDDは、毎月の月経前に発生する精神的不快感や身体的変化を伴い、感情や行動に著しい影響を及ぼします。具体的には、イライラ感や不安、気分の変動、さらには無力感や絶望感などが含まれます。

症状

PMDDの症状には、以下のようなものがあります：

• - 心理的症状: 悲しみ、自殺念慮、緊張感、不安、焦燥感、涙もろさ、イライラ、怒り、対人関係の摩擦など。
• - 身体的症状: 疲労感、食欲の変化、睡眠の問題（過眠または不眠）など。

これらの症状は通常、月経の黄体期に見られ、ほぼ全ての月経期間において5つ以上の顕著な症状が現れます。症状が継続し、生活に支障をきたす場合は、PMDDの可能性が考慮されます。

診断基準

PMDDの診断は、DSM-5（精神障害の診断と統計マニュアル）の基準に従います。診断には、過去1年間の月経周期のほとんどにおいて、著しい不快感が伴っていることが求められます。特に、感情的な変化や実生活における機能障害が際立つ場合、PMDDと診断されることがあります。

鑑別診断

PMDDは他の身体的または精神的な疾患との鑑別が重要です。普通の月経前の不快症状ではなく、PMDDの場合は、月経周期に密接に関連する様々な症状がより重篤で持続的に現れます。また、甲状腺機能低下症や貧血などの身体的な問題が影響することもあるため、適切な診断が必要です。

疫学

研究によると、正常な月経周期を持つ女性の中で約3%から8%がPMDDの診断基準を満たすとされています。日本においては月経前症候群（PMS）の有病率が約5.4%、精神的な障害としてのPMDDは約1.2%と算出されています。

治療法

PMDDの治療にはいくつかの方法があります。最も効果的とされるのは、抗うつ薬（SSRI）などの薬物療法であり、現在の研究ではセルトラリンやパロキセチンが有効とされています。ホルモン療法としては、特定の避妊薬に含まれる成分も効果があることが示されています。

さらに、漢方薬や認知行動療法も治療に用いられ、個々の症状に応じたアプローチが重要です。2017年のレビューでは、植物成分のチェストツリーの効果も評価されています。

まとめ

PMDDは、月経周期と深く関連した精神的な問題です。多様な症状があり、生活に大きな影響を与えるため、適切な診断と治療が必要です。心身の不快感を軽減し、日常生活の質を向上させるための取り組みが重要となります。

もう一度検索