有気記号

有気記号とは

有気記号（ゆうききごう）は、古代ギリシア語で「h」音を示すために使用されるダイアクリティカルマークです。この記号は逆に「h」が存在しないことを示す無気記号と対になり、両者を合わせて気息記号と呼びます。

概要

紀元前5世紀頃、ギリシアではイオニア式アルファベットが広く使用されましたが、この文字体系には/h/音を表す文字が欠けていました。しかし、言葉の意味を変える音韻的な役割を持つ「h」の有無は重要であり、例えば「ὄρος」（oros、山）と「ὅρος」（horos、境界）という語の区別に影響を与えました。これらの語の正しい使用を支援するため、有気記号が用いられます。具体的には、有気記号は主に以下の位置に現れます。

1. 語頭の母音の上に付加される。ただし、二重母音においては後の母音の上に付記される。
2. 語頭の ρ（r）の上にも常に有気記号が付けられ、例えば「ρρ」は「ῤῥ」と表記されます。
3. ラテン文字においては、有気記号は「h」で表され、現代英語のいくつかの単語（例：rhythm, rhetoric, catarrh）にもその痕跡が残っています。

歴史

古代においては、/h/音は「Η」字によって表されていましたが、イオニア方言ではこの音が早く失われました。そのため、「Η」字は母音の/ɛː/を示すために利用されるようになりました。イオニア式アルファベットは他の地域にも広まり、ギリシア語の表記の標準とされました。例えば、アッティカ方言では紀元前403年にこのアルファベットが公式に採用されましたが、その当時も/h/音はまだ残っていました。

マグナ・グラエキア地域では、この/h/音を示すために「Η」の左半分から派生した新たな文字が使用されました。後にアレクサンドリアの文法家たちがこの文字を母音の上に記号として付け加えました。初めは意味が変わる場合のみ区別するために使われた有気記号ですが、その後「h」が存在しないことを示すための記号も考案されました。それが進化し、現在の有気記号（῾）と無気記号（᾿）となりました。

西暦2世紀末頃までには語頭の/h/音が存在していましたが、4世紀には消えることとなります。現代ギリシア語においては、/h/音はなく、デモティキ（現代の口語ギリシャ語）ではこの記号は使われていません。

まとめ

有気記号と無気記号は、古代ギリシア語の音の変化を示す重要な記号であり、その歴史を知ることで、言葉の奥深さや文化の変遷を理解することができます。古代の人々がどのように言語を扱ってきたのか、その背景を知ることは、現代においても重要な学びとなるでしょう。

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