有賀幸作

有賀幸作：戦艦大和最後の艦長、波乱に満ちた生涯

有賀幸作は、1897年（明治30年）8月21日、長野県に生まれました。父は旅順攻囲戦で功績を挙げた軍人で、有賀自身も幼少期から活発な少年として育ち、海軍への道を志しました。しかし、父は息子の軍人志願に反対したと伝えられています。

1917年（大正6年）、海軍兵学校を卒業。同期には、後に名だたる艦艇の艦長や要職に就く者もおり、有賀自身も華々しい海軍人生を歩むことになります。卒業後は駆逐艦「水無月」からキャリアをスタートさせ、水雷戦隊の指揮官として経験を積み重ねました。戦艦「長門」の砲台長を務めた時期には、規律の厳しい艦内生活に戸惑うこともあったようです。

その後、様々な艦艇の艦長や司令官を歴任。中国大陸沿岸の警備任務や、日中戦争における掃海任務にも従事しました。掃海任務だけでなく、上陸支援や中国軍掃討任務もこなすなど、多様な経験を積んだ結果、中国側からは懸賞金がかけられるほどになったという逸話も残っています。太平洋戦争開戦後は、最新鋭の駆逐艦を率いてマレー作戦に参加。数々の戦闘で活躍し、イギリスやアメリカの艦艇を撃沈するなど、その卓越した指揮能力を発揮しました。

しかし、ミッドウェー海戦では、大破した「赤城」の沈没処分を命じられるという、辛い経験も味わっています。有賀自身は、初めて発射した魚雷が「赤城」に向けられたことに強い衝撃を受け、その後もそのことを悔やみ続けたと伝えられています。

1944年（昭和19年）11月、有賀はついに戦艦「大和」の艦長に任命されます。「帝国海軍の象徴」とも言える大和の艦長に就任したことは、有賀にとって大きな喜びであったと伝えられています。大和乗組員からも、その豪放磊落な人柄と卓越した指揮能力から厚い信頼を得ていました。しかし、燃料不足による訓練制限や、部下からの弱音など、艦長としての苦悩も抱えていたようです。

1945年（昭和20年）4月7日、沖縄戦における「坊ノ岬沖海戦」で、アメリカ軍機の大規模な攻撃を受け、「大和」は沈没。有賀も艦と共に運命を共にし、戦死しました。戦死の状況については諸説ありますが、羅針儀にしがみついて沈んだという説が広く知られています。享年49歳。戦死後、海軍中将に追叙されました。

有賀幸作の生涯は、数々の海戦を経験し、部下からの信頼も厚かった名将の物語です。豪放磊落な性格と、実戦を重視する姿勢は、部下から慕われ、多くの逸話も残されています。家族思いの一面や、水虫に悩まされていたという人間味あふれるエピソードも、有賀という人物像をより深く理解する上で重要な要素と言えるでしょう。彼の最期は悲劇的ではありましたが、その生涯は、日本海軍の歴史に深く刻まれたものと言えるでしょう。

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