有賀敏之
有賀 敏之（あるが としゆき）氏は、1960年11月29日生まれの日本の経済学者です。世界経済論およびグローバリゼーション論における今日の日本を代表する研究者の一人と目されています。
長野県飯田市で生まれた有賀氏は、「信州飯田の人」と自称することがあり、これは同郷の著名な文化人たちへの敬意とも捉えられます。京都大学経済学部を卒業後、同大学院経済学研究科の博士後期課程を修了し、経済学の博士号を取得しました。京都大学では、経済学部の渡辺尚氏、大学院法学研究科で政治学の高坂正堯氏、そして経済学研究科では経済政策学の杉本昭七氏に師事しました。特に杉本氏からは最後の高弟として薫陶を受けています。研究者としてのキャリアは、筑波大学社会科学系助教授から始まり、その後、大阪市立大学教授、大阪公立大学経済学部・大学院経済学研究科教授を歴任しました。2024年からは福山大学経済学部の教授を務めており、2025年からは同学の学長補佐および大学院経済学研究科長も兼務する予定です。
有賀氏の研究は、国際経済学、国際関係論、多国籍企業論という三つの分野を横断する独自の学際的なアプローチで知られています。叙述においては、歴史と空間という二つの軸から事象を捉えるスケール感豊かなパースペクティブを持ち味としています。
博士論文の成果として発表された、現代帝国主義論を新たな視点から分析した研究によって学界で注目を集めました。その後、ミレニアム前後にかけて活発化した多国籍企業の国際的な組織再編に焦点を移し、ミクロレベルでの詳細な検証を行いました。近年は、国内外の巨大都市が形成する経済圏に着目し、広範な地域経済の実証研究という新たな領域を開拓しています。特に中国の都市経済に関する研究は深く、『中国日系企業の産業集積〔上海・長江デルタ・天津篇〕』（2012年）として集成されています。
2022年6月には、研究者向けの専門書とは異なる初めての一般向け著作として、『中国の危機と世界 ―強権国家・終わらないバブル・人民共和国崩壊』を刊行しました。この著作は、数多く出版されている中国に関する批判的な書籍とは一線を画し、中国不動産市場の動向から中華人民共和国の体制崩壊の可能性までを、学際的な視点から分析し予測したものです。刊行前から注目を集め、Amazonの関連カテゴリーで予約段階から首位を獲得するなど、大きな反響を呼びました。
特に、同書で示唆されていた中国国内の情勢不安は、同年11月に現実のものとなりました。首都北京をはじめとする主要都市で、政府のゼロコロナ政策に対する若者を中心とした大規模な抗議活動、いわゆる「白紙運動」が発生したのです。これに対し、中国共産党は国民の要求を受け入れる異例の形で対応し、2023年初頭には、習政権の象徴であったゼロコロナ政策の放棄に追い込まれました。その結果、感染者数の実態が正確に把握されないまま水面下での感染爆発が発生し、公表される死者数と実際の状況との乖離が拡大しました。2023年1月には春節に伴う大規模な人の移動があり、その後の情勢緊迫化が懸念されました。2月には、地方政府による医療給付削減に抗議するため、武漢や大連などで高齢者主体のデモ「白髪革命」が再燃しましたが、日本の主要メディアでは十分に報じられませんでした。
これらの連続した動きを踏まえ、2023年4月には前年の著作の続編となる初のKindle版電子書籍『白紙運動の衝撃とロシアの危機: 再ブロック化する世界』を刊行しました。この著作では、白紙運動から白髪革命へと至る中国の動乱の兆候と、ウクライナでの戦争に苦慮し体制が揺らぐロシアを対比させて論じています。さらに補論として、明代中国におけるペスト流行と王朝動揺の関係性についての考察が加わり、パンデミック研究という新たな分野への展開も示されています。
2016年から2019年にかけては、大阪市立大学大学院創造都市研究科の研究科長を務めました。同研究科は当時、社会科学系大学院として学生定員数が日本最大であり、社会人大学院としても最大規模を誇っていました。
また、有賀氏の伯従父（母の従兄）に、著名な作曲家の小林亜星氏がいます。小林氏の父である利政氏が上京した際、職を得るまでの間、妻の新舟塩子氏（有賀氏の母方の祖母）とともに、塩子氏の実兄であり有賀氏の母方の祖父にあたる新舟勇司氏の家に一時的に身を寄せていたという深い縁があります。さらに、小林亜星氏自身も戦時中の学童疎開で信州佐久に滞在していた時期に、従妹である有賀氏の母・修子氏と兄妹のように過ごしました。
『グローバリゼーションの政治経済学』（同文舘, 1999年、2002年、2005年）
『グローバル企業再編』（同文舘, 2007年）
『中国日系企業の産業集積〔上海・長江デルタ・天津篇〕』（同文舘, 2012年）
『中国の危機と世界 ―強権国家・終わらないバブル・人民共和国崩壊』（同文舘, 2022年）
『白紙運動の衝撃とロシアの危機: 再ブロック化する世界』（Amazon Kindle, 2023年）
共著：『岐路に立つグローバリゼーション―多国籍企業の政治経済学』（ナカニシヤ出版, 2008年）
* 共編著：（関下稔）『東海地域と日本経済の再編成―地域経済、グローバル化、産業クラスター』（同文舘, 2009年）
これらの著作や研究活動を通じて、有賀氏は現代の複雑な世界経済や社会情勢に対する洞察を提供し続けています。
経歴
長野県飯田市で生まれた有賀氏は、「信州飯田の人」と自称することがあり、これは同郷の著名な文化人たちへの敬意とも捉えられます。京都大学経済学部を卒業後、同大学院経済学研究科の博士後期課程を修了し、経済学の博士号を取得しました。京都大学では、経済学部の渡辺尚氏、大学院法学研究科で政治学の高坂正堯氏、そして経済学研究科では経済政策学の杉本昭七氏に師事しました。特に杉本氏からは最後の高弟として薫陶を受けています。研究者としてのキャリアは、筑波大学社会科学系助教授から始まり、その後、大阪市立大学教授、大阪公立大学経済学部・大学院経済学研究科教授を歴任しました。2024年からは福山大学経済学部の教授を務めており、2025年からは同学の学長補佐および大学院経済学研究科長も兼務する予定です。
研究活動
有賀氏の研究は、国際経済学、国際関係論、多国籍企業論という三つの分野を横断する独自の学際的なアプローチで知られています。叙述においては、歴史と空間という二つの軸から事象を捉えるスケール感豊かなパースペクティブを持ち味としています。
博士論文の成果として発表された、現代帝国主義論を新たな視点から分析した研究によって学界で注目を集めました。その後、ミレニアム前後にかけて活発化した多国籍企業の国際的な組織再編に焦点を移し、ミクロレベルでの詳細な検証を行いました。近年は、国内外の巨大都市が形成する経済圏に着目し、広範な地域経済の実証研究という新たな領域を開拓しています。特に中国の都市経済に関する研究は深く、『中国日系企業の産業集積〔上海・長江デルタ・天津篇〕』（2012年）として集成されています。
近年の著作と反響
2022年6月には、研究者向けの専門書とは異なる初めての一般向け著作として、『中国の危機と世界 ―強権国家・終わらないバブル・人民共和国崩壊』を刊行しました。この著作は、数多く出版されている中国に関する批判的な書籍とは一線を画し、中国不動産市場の動向から中華人民共和国の体制崩壊の可能性までを、学際的な視点から分析し予測したものです。刊行前から注目を集め、Amazonの関連カテゴリーで予約段階から首位を獲得するなど、大きな反響を呼びました。
特に、同書で示唆されていた中国国内の情勢不安は、同年11月に現実のものとなりました。首都北京をはじめとする主要都市で、政府のゼロコロナ政策に対する若者を中心とした大規模な抗議活動、いわゆる「白紙運動」が発生したのです。これに対し、中国共産党は国民の要求を受け入れる異例の形で対応し、2023年初頭には、習政権の象徴であったゼロコロナ政策の放棄に追い込まれました。その結果、感染者数の実態が正確に把握されないまま水面下での感染爆発が発生し、公表される死者数と実際の状況との乖離が拡大しました。2023年1月には春節に伴う大規模な人の移動があり、その後の情勢緊迫化が懸念されました。2月には、地方政府による医療給付削減に抗議するため、武漢や大連などで高齢者主体のデモ「白髪革命」が再燃しましたが、日本の主要メディアでは十分に報じられませんでした。
これらの連続した動きを踏まえ、2023年4月には前年の著作の続編となる初のKindle版電子書籍『白紙運動の衝撃とロシアの危機: 再ブロック化する世界』を刊行しました。この著作では、白紙運動から白髪革命へと至る中国の動乱の兆候と、ウクライナでの戦争に苦慮し体制が揺らぐロシアを対比させて論じています。さらに補論として、明代中国におけるペスト流行と王朝動揺の関係性についての考察が加わり、パンデミック研究という新たな分野への展開も示されています。
その他の活動と親族
2016年から2019年にかけては、大阪市立大学大学院創造都市研究科の研究科長を務めました。同研究科は当時、社会科学系大学院として学生定員数が日本最大であり、社会人大学院としても最大規模を誇っていました。
また、有賀氏の伯従父（母の従兄）に、著名な作曲家の小林亜星氏がいます。小林氏の父である利政氏が上京した際、職を得るまでの間、妻の新舟塩子氏（有賀氏の母方の祖母）とともに、塩子氏の実兄であり有賀氏の母方の祖父にあたる新舟勇司氏の家に一時的に身を寄せていたという深い縁があります。さらに、小林亜星氏自身も戦時中の学童疎開で信州佐久に滞在していた時期に、従妹である有賀氏の母・修子氏と兄妹のように過ごしました。
主要著作
『グローバリゼーションの政治経済学』（同文舘, 1999年、2002年、2005年）
『グローバル企業再編』（同文舘, 2007年）
『中国日系企業の産業集積〔上海・長江デルタ・天津篇〕』（同文舘, 2012年）
『中国の危機と世界 ―強権国家・終わらないバブル・人民共和国崩壊』（同文舘, 2022年）
『白紙運動の衝撃とロシアの危機: 再ブロック化する世界』（Amazon Kindle, 2023年）
共著：『岐路に立つグローバリゼーション―多国籍企業の政治経済学』（ナカニシヤ出版, 2008年）
* 共編著：（関下稔）『東海地域と日本経済の再編成―地域経済、グローバル化、産業クラスター』（同文舘, 2009年）
これらの著作や研究活動を通じて、有賀氏は現代の複雑な世界経済や社会情勢に対する洞察を提供し続けています。
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