有限会社 (ルクセンブルク)

ルクセンブルクにおける有限会社は、正式名称を「Société à responsabilité limitée」といい、通常は略称である「s.à r.l.」あるいは「SARL（エス・アー・エール・エル）」として知られています。これは、ルクセンブルクの会社法、具体的には1915年8月10日付の商業会社に関する法律に基づき規定された企業形態の一つです。

s.à r.l.は、その名称が示す通り、「société（会社または組合）」が「à responsabilité limitée（有限責任の）」であるという特徴を持ちます。つまり、会社債権者に対する責任が出資額の範囲に限定される形態であり、出資者個人の財産が会社の債務によって直接影響を受けることはありません。この有限責任性は、投資家にとってリスクを限定できるため、企業設立や投資活動における重要な要素となります。

この企業形態は、商業会社として法的に独立した存在、すなわち法人格を有しています。これにより、s.à r.l.は会社自身の名義で契約を締結したり、資産を所有したり、訴訟の当事者となったりすることが可能です。

歴史的には、日本の旧有限会社制度と類似した特徴を持つとされています。ただし、ルクセンブルクのs.à r.l.は現代の国際的なビジネス環境において、より多様な役割を担っています。

特に、税制面での優位性や設立・運営手続きの簡便さから、クロスボーダー取引や国際的な資産管理における特別目的会社（SPC: Special Purpose Company）として広く活用されている点が挙げられます。多国籍企業のグループ内での持株会社や金融取引の受け皿など、様々な目的で設立されます。

また、ルクセンブルク法では、一人の個人または法人が100%出資して設立する一人有限会社（société à responsabilité limitée unipersonnelle; s.à r.l.u.）も認められています。これにより、単独での事業展開や資産保有のための利用も容易となっています。

なお、「Société à responsabilité limitée」あるいは類似の名称を持つ企業形態は、ルクセンブルクだけでなく、フランスやスイスなど、大陸法系の国々やフランス語圏を中心に広く存在します。それぞれの国の法制度によって細部には違いがありますが、出資者の有限責任という基本的な特徴は共通しています。ルクセンブルクのs.à r.l.を理解する上で、日本の株式会社や合同会社、ドイツのGmbH、フランスのSARLなど、他の国の有限責任企業形態と比較することも有効です。

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