有馬晋作

有馬晋作

概説

有馬晋作氏は、行政学、特に地方自治論を専門とする日本の研究者です。長年にわたる鹿児島県職員としての実務経験と、大学での教育・研究活動を通じて、理論と実践の両面から地方行政のあり方を探求してきました。宮崎公立大学では助教授、准教授、教授を歴任し、2017年から2023年まで第8代学長を務めました。現在は同大学名誉教授、鹿児島大学の客員教授として活動しています。博士（学術）。

経歴

1955年に鹿児島県鹿児島市で生まれた有馬氏は、県立甲南高等学校を経て、明治大学経営学部で経営学を修めました。卒業後、すぐに大学院へ進むのではなく、1980年に鹿児島県庁に入庁し、地方公務員としてのキャリアをスタートさせます。約23年間の県庁勤務では、高齢者福祉や過疎対策など、地域社会の課題に深く関わる部署で経験を積みました。この間には、国の機関である自治省（現・総務省）へ出向し、「地方財政白書」の執筆に携わった経験や、現在の伊佐市にあたる大口市役所での勤務経験もあり、多様な角度から行政の実務を学びました。

公務員として働きながらも、学術研究への関心を深め、社会人大学院生として学びを続けます。1996年に鹿児島大学大学院法学研究科に入学し、修士（法学）を取得。さらに同大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程に進み、地方行政を主な研究テーマとしました。博士課程では単位を満了し、その後、長年の研究成果を論文としてまとめ、2015年に鹿児島大学から博士（学術）の学位を授与されました。県庁での実務経験は、彼の研究活動に現実的な視点と深みを与えました。

研究活動と業績

2004年、有馬氏は長年の行政経験と学術的素養を活かし、宮崎公立大学人文学部助教授として大学教員に転身します。その後、准教授、教授へと昇任し、行政論や地方自治論の講義を担当。学生指導や大学運営にも貢献し、学生部長や教務部長を歴任しました。また、日本地方自治研究学会の常任理事も務めています。

研究者としては、特に首長のリーダーシップや現代のポピュリズム現象に関心を寄せ、活発な研究活動を展開しています。その成果は多くの著書として結実しています。2009年刊行の『東国原知事は宮崎をどう変えたか―マニフェスト型行政の挑戦』では、当時の宮崎県政を実証的に分析し、第7回法政大学地域政策研究賞奨励賞を受賞しました。また、2021年刊行の『暴走するポピュリズム　─日本と世界の政治危機』では、国内外のポピュリズムの現状と課題を鋭く考察し、2021年度の第32回宮日出版文化賞と2022年度の日本地方自治研究学会学会賞という二つの賞を受賞するなど、その研究が高く評価されています。その他の主な著書に『劇場型首長の戦略と功罪』、『劇場型ポピュリズムの誕生』などがあります。

学術界での活動に加え、メディアでの発言も多く、宮崎日日新聞などを通じて、地方行政に関する専門的な見解を示し、地域社会への貢献も行っています。特に、東国原英夫氏の県政に関するコメントは注目を集めました。

学長職と現在

2017年4月には、宮崎公立大学の第8代学長に就任。大学の教育・研究の発展と運営に尽力しました。2023年3月に学長および教授職を退任し、同年には長年の功績が称えられ、宮崎公立大学名誉教授の称号が贈られました。現在も研究への情熱は衰えず、2023年4月からは鹿児島大学法文学部附属「鹿児島の近現代」教育研究センターの客員教授として、後進の指導や研究活動を続けています。実務と理論を兼ね備えた稀有な研究者として、今後も地方自治のあり方に関する貴重な知見を提供し続けることが期待されています。

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