有馬玩具博物館

有馬玩具博物館：おもちゃと郷土を繋ぐ、癒やしの空間

六甲山系の豊かな自然に抱かれた有馬温泉。その地に、独特の魅力を放つ博物館があります。2003年に開館した有馬玩具博物館は、おもちゃを通して地域活性化を目指した、ユニークな歴史を持つ施設です。

夢の始まり：加藤裕三氏と有馬温泉

この博物館の礎を築いたのは、国民的お菓子「グリコ」のおまけ玩具のデザインで知られる加藤裕三氏です（2001年没）。加藤氏は、有馬温泉を次世代へと繋ぐため、おもちゃの持つ教育的価値に着目しました。おもちゃを通して地域住民にモノづくりの楽しさを伝え、更におもちゃ産業を地域経済の活性化に繋げようという構想です。その構想に共感したのが、有馬温泉の老舗旅館「御所坊」の金井啓修氏でした。旅館の一部を改装し、博物館の誕生へと繋がります。

世界に誇るオートマタのコレクションと、その後継者

加藤氏の没後、館長を引き継いだのは、世界的なからくり人形作家である西田明夫氏（2009年没）です。西田氏は岡山県東粟倉村にある現代玩具博物館の館長も兼任しており、世界の玩具収集、保存、展示に尽力しました。有馬玩具博物館では、そのコレクションの中でも特に「オートマタ」（からくり人形）が充実しており、世界最大規模を誇ると言われています。中でも、サンダーバードの人形作者として知られるジョン・ブランダール作の「パーカー」人形3体が展示されていることは、大きな見どころです。西田氏の収集活動は現在も続けられています。

館内の見どころ：多様な展示と体験

博物館は6階建てで、各階ごとに異なるテーマの展示が展開されています。

6階：ドイツの伝統玩具　ドイツ・エルツ地方の伝統的な木の人形や、鉱山町の文化を反映したクリスマス飾り「シュヴィップボォーゲン」、ユーモラスなクルミ割り人形など、精巧な手工芸品の数々が展示されています。
5階：現代のおもちゃとプレイスペース　西田明夫館長の視点でセレクトされた、アーティスティックな現代のおもちゃが並びます。5年以上生産されているおもちゃという条件で選ばれており、博物館スタッフによるおもちゃを使ったパフォーマンスも定期的に行われています。
4階：現代のからくり人形（オートマタ）　世界でも30人程度しかいないと言われる、高度な技術と芸術性を兼ね備えたオートマタ作家たちの作品が展示されています。イギリス、ドイツ、ラテン系の作家による作品の違いを見比べることができ、それぞれの国の国民性が垣間見えます。
3階：世界のブリキのおもちゃ　戦後の日本の復興とブリキおもちゃ産業の歴史が展示されています。日本のブリキおもちゃの精密さや、製造工程の複雑さ、そしてプラスチック製おもちゃへの移行などが分かりやすく解説されています。また、ドイツのメルクリン社製の精密な鉄道模型のジオラマも設置され、定期的に稼働しています。
2階：おもちゃレストランとバー　家族連れが楽しめるレストランと、落ち着いた雰囲気のバーが併設されています。
1階：アトリエとミュージアムショップ　おもちゃ作りのワークショップが開催されるアトリエと、お土産を購入できるミュージアムショップがあります。

「ものづくり」を未来へ：教育への取り組み

有馬玩具博物館では、単なる展示にとどまらず、「ものづくり」の教育にも力を入れています。工作教室や自然素材玩具の普及活動を通して、子どもたちに創造性を育む機会を提供しています。

アクセス情報

所在地：〒651-1041　兵庫県神戸市北区有馬町797番地
交通アクセス：神戸電鉄有馬温泉駅から徒歩5分、六甲有馬ロープウェー有馬温泉駅から徒歩10分など

有馬玩具博物館は、おもちゃの素晴らしさと、地域社会への貢献を融合させた、他に類を見ない博物館です。有馬温泉を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてください。

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