有馬線

国鉄有馬線：温泉郷への足跡と廃線後の姿

兵庫県三田市にあった三田駅から、神戸市北区の有馬温泉へと至る鉄道、国鉄有馬線。太平洋戦争中の1943年、不要不急線として休止、事実上廃止されたこの路線は、古くから栄える有馬温泉に鉄道が初めて乗り入れた歴史的な存在でした。全長12.2km、5つの駅を有する単線非電化路線は、多くの乗客を運び、地域の生活や観光に貢献しました。

運行と競合

有馬線は、基本的には線内折り返し運転が中心でしたが、1940年には大阪駅から福知山線を経由し、三田駅で有馬線に乗り入れて有馬駅まで直通する列車が1往復運行されていました。この直通列車は、大阪と有馬温泉を結ぶ貴重なアクセス手段として機能していました。

列車の本数は時代とともに変化し、1916年頃は全区間6往復、所要時間は35～40分でしたが、1934年12月には7往復に増え、所要時間も短縮されて28～37分となっていました。しかし、1928年に神戸有馬電気鉄道の三田線が三田駅と有馬温泉駅間を運行開始すると、競争激化に直面します。神戸有馬電気鉄道の駅が温泉街に近い場所に位置していたのに対し、国鉄の有馬駅は町外れに位置していたため、国鉄有馬線は次第に不利な立場に立たされるようになりました。

誕生から廃線まで

有馬線の建設は、有馬鉄道によって進められました。当初は有馬電気軌道が軌道敷設特許を取得していましたが、実現に至らず、有馬鉄道が鉄道敷設免許を取得し、1915年4月16日に開業しました。開業と同時に鉄道院（後の鉄道省）が借り上げ、国有鉄道線と同様の運営が行われ、1919年には正式に国有化され「有馬軽便線」となりました。その後「有馬線」と改称され、昭和初期には、競合する神戸有馬電気鉄道との間で激しい競争を繰り広げました。

しかし、太平洋戦争の激化により、1943年7月1日、不要不急線として全線休止となり、その後は復活することなく、事実上廃止されました。鉄道施設は撤去され、一部は篠山線の敷設に転用されました。

廃線後の跡地

1964年、国鉄から芦有開発株式会社に廃線敷地の払い下げが行われ、芦有ドライブウェイの建設などに活用されました。廃線跡は、その後、道路建設や生活道路などに転用され、現在では、一部区間を除いて、線路跡はほとんど見ることができません。しかし、神鉄道場駅付近や西宮北IC付近、そして有馬病院付近など、わずかながらも築堤などの痕跡が残っており、往時の面影を偲ばせることができます。

まとめ

国鉄有馬線は、わずか30年弱の歴史でしたが、有馬温泉へのアクセス路線として重要な役割を果たしました。競争激化や戦争という時代の流れの中で廃線となりましたが、その歴史は、地域の交通史に重要な一頁を刻んでいます。現在、線路は消え去りましたが、わずかに残る痕跡は、かつてこの地を走っていた鉄道の物語を語り継いでいます。

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