有馬-高槻断層帯

有馬-高槻断層帯について

有馬-高槻断層帯は、北摂山地と六甲山地・大阪平野の境界に位置する、東西方向に延びる活断層帯です。この断層帯は、別名「有馬-高槻構造線」とも呼ばれ、西は神戸市北区の有馬温泉付近から、東は大阪府高槻市内に至る約55kmの長さに及びます。地震調査研究推進本部によって「主要活断層帯」の一つとして評価されています。

地形と構造

大阪平野の北縁には、東北東から西南西方向にかけて崖地形が連続しており、この地形は北側の主に中生代の岩石からなる北摂山地と、南側の地下に花崗岩が存在する平野部との構造的な境界を形成しています。この境界は、古くからの断層活動の結果であると考えられ、藤田和夫らによって「有馬-高槻構造線」と命名されました。

断層の構成

有馬-高槻断層帯は、複数の断層が複雑に組み合わさって構成されています。具体的には、東から真上断層、安威断層、坊島断層、如意谷断層、箕面断層、五月丘断層、石澄滝断層、花屋敷低地帯北縁断層、花屋敷低地帯南縁断層、清荒神断層などが断続的に配列し、または並行して存在しています。さらに、これらの南側には、野畑断層、昆陽池断層、伊丹断層も位置し、広義にはこれらも断層帯の一部とみなされます。

地震活動

過去の記録によると、有馬-高槻断層帯は過去3000年間に3回活動したと考えられています。特に1596年に発生した慶長伏見地震（M7.5）では、この断層帯や六甲・淡路島断層帯の一部が震源断層として活動したと推測されています。

活動履歴の調査

1995年の兵庫県南部地震を契機に、地震調査研究推進本部が全国の主要な活断層の調査を開始しました。その初年度には、野島断層とともに有馬-高槻断層帯が調査対象となり、寒川旭らによって花屋敷低地帯北縁断層、坊島断層、真上断層、安威断層のトレンチ調査が行われました。

これらの調査結果から、花屋敷低地帯北縁断層では、北東-南西方向の引張力による右横ずれ活動の痕跡が発見されました。この活動は、安土桃山時代の土師皿を含む地層を引き裂き、その上部が江戸時代の陶磁器片を含む耕作土に覆われていたことから、安土桃山時代から江戸時代にかけての短い期間に発生したと考えられ、慶長伏見地震に該当すると推定されています。

また、坊島断層でも、畦道が3mほど右横ずれに食い違っている地点が見つかり、その地層から鎌倉時代から室町時代に使われた瓦器片や安土桃山時代の瀬戸焼片が出土しました。このことから、この断層の活動も慶長伏見地震に関連する可能性が高いとされました。

さらに、真上断層では室町時代から江戸時代の間、安威断層では鎌倉時代以降の活動の痕跡が確認されました。安威断層の西端にある耳原遺跡の調査からは、慶長伏見地震の一つ前の活動の痕跡も発見され、放射性炭素年代測定の結果、約2800-3000年前の活動と推定されました。

これらの調査結果から、有馬-高槻断層帯の活動が慶長伏見地震を含む過去の地震と関連していることが明らかになりました。また、この断層帯より南西に位置する淡路島の東浦断層や野田尾断層でも、慶長伏見地震の発生時期に対応する痕跡が発見されています。

今後の発生予測

地震調査研究推進本部は、有馬-高槻断層帯において、今後30年以内にM7.5程度の地震が発生する確率を「ほぼ0〜0.03%」と計算しています（2018年4月時点）。ただし、2018年6月18日に発生した大阪府北部地震（Mj6.1）は、震源が近いことから当断層帯との関連性が指摘されています。

断層と温泉

有馬-高槻断層帯の西端に位置する有馬温泉は、高濃度の塩分を含む湯が特徴です。この温泉は、沈み込んだフィリピン海プレートのスラブからの脱水に起源を持つとされています。熱水は、マグマ活動とは関係なく、有馬-高槻構造線沿いの花崗岩からなる大規模変質帯を通って地表に湧き出していると考えられています。すなわち、温泉水は断層帯にある地下深くまで続く岩盤の傷から湧き出していると考えられています。

慶長伏見地震後には、温泉の湯温が上昇し入浴が不可能となったため、豊臣秀吉が温泉の修復と整備を命じました。しかし、25年後に林羅山が温泉を訪れた際にも、湯は熱く卵が茹でられるほどであったと伝えられています。

まとめ

有馬-高槻断層帯は、過去に大地震を引き起こした活断層帯であり、現在もその活動が懸念されています。断層の複雑な構造や過去の活動履歴、温泉との関連など、様々な側面から注目されています。今後の地震発生予測や防災対策のためにも、継続的な調査と研究が必要です。

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