服部幸雄

服部幸雄：歌舞伎研究の巨人、その生涯と多大な貢献

服部幸雄氏（1932年-2007年）は、日本を代表する歌舞伎研究家、芸能研究家、そして日本文化史家として知られています。千葉大学名誉教授の肩書きを持ち、その幅広い研究活動は、歌舞伎のみならず、日本の伝統芸能や文化史に多大な貢献を果たしました。

愛知から学問への道

愛知県に生まれた服部氏は、名古屋大学文学部を卒業後、高校教師の職に就きます。その後、1967年には国立劇場芸能調査室主任専門員に就任。この経験が、彼の研究人生に大きな影響を与えたことは想像に難くありません。国立劇場での活動は、単なる職務にとどまらず、歌舞伎の史料保存や復活狂言の監修といった、実践的な活動の場となりました。

研究活動と教育

1969年には芸術選奨新人賞を受賞。その受賞対象となった『歌舞伎成立の研究』は、従来の俗説を覆す画期的な内容で、歌舞伎研究に新たな地平を切り開きました。その後、1984年には千葉大学教授に就任。教育者としての活動にも尽力し、1999年に千葉大学を退職後は日本女子大学教授として後進の育成にも携わりました。

服部氏の研究は、歌舞伎そのものの歴史や構造にとどまりません。芸能と信仰のかかわり、特に「宿神論」や「後戸の神」に関する研究は、深い洞察に満ちており、現在でも多くの研究者にとって必読文献として高く評価されています。没後、これらの研究成果は『宿神論』としてまとめられ、単行本として出版されました。

多彩な業績と栄誉

『歌舞伎俳優名跡便覧』の編纂など、歌舞伎史料の保存にも大きく貢献しました。また、数々の著書は、歌舞伎研究のみならず、日本の近世文化、特に江戸時代の文化理解に大きな役割を果たしています。例えば、『江戸の芝居絵を読む』や『さかさまの幽霊』といった著作は、絵画や演劇を通じて江戸時代の視覚文化や社会風俗を深く考察したものです。

彼の業績は高く評価され、毎日出版文化賞特別賞(1992年)や内山晋米寿記念浮世絵奨励賞(2000年)など数々の賞を受賞しています。

主要な著書

服部氏の著作は膨大であり、その内容は歌舞伎研究のみにとどまらず、江戸時代の文化、社会、信仰といった多様な側面に広がっています。主な著書を以下に挙げます。

『歌舞伎成立の研究』
『歌舞伎の構造 伝統演劇の創造精神』
『歌舞伎の原像』
『変化論 歌舞伎の精神史』
『市川団十郎 江戸歌舞伎十一代の系譜』
『江戸歌舞伎論』
『大いなる小屋　近世都市の祝祭空間』
『さかさまの幽霊　＜視＞の江戸文化論』
『歌舞伎のキーワード』
『江戸の芝居絵を読む』
『歌舞伎歳時記』
『江戸歌舞伎の美意識』
『花道のある風景 歌舞伎と文化』
『歌舞伎ことば帖』
『絵本夢の江戸歌舞伎』
『市川團十郎代々』
『江戸歌舞伎文化論』
『歌舞伎の原郷 地芝居と都市の芝居小屋』
『絵で読む歌舞伎の歴史』
『宿神論　日本芸能民信仰の研究』
『歌舞伎事典』（共編著）
『歌舞伎俳優名跡便覧』（監修）

これらの著作は、歌舞伎研究者のみならず、日本の文化や歴史に興味を持つ全ての人にとって貴重な資料となっています。

結論

服部幸雄氏は、類まれな研究者として、教育者として、そして日本の文化遺産の保存に貢献した人物です。彼の功績は、これからも日本の歌舞伎研究、ひいては日本文化研究を支え続けるでしょう。その研究成果は、後世に語り継がれるべき重要な遺産であり、私たちは彼の残した業績に敬意を表し、深く感謝する必要があります。

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