望月眞弓

望月眞弓（もちづき まゆみ）は、1954年3月10日に生まれた、日本の学界において重要な地位を占める薬学者である。長年にわたり大学教育と研究に携わる傍ら、病院薬剤業務の発展にも貢献し、さらに科学技術行政や企業活動においても指導的な役割を果たしてきた。

望月氏は山梨県に生まれ育ち、1976年に千葉大学薬学部を卒業して薬学の道を歩み始めた。卒業後、製薬企業である日本ロシュに入社し、学術部でそのキャリアの第一歩を踏み出した。企業での経験を積んだ後、病院薬剤業務への関心を深め、1983年には北里大学病院薬剤部で研修生として実践的な学びを深めた。同年中に正式に同薬剤部に入職し、病院薬剤師としての経験を重ねる傍ら、研究活動にも精力的に取り組み、1992年には北里大学より医学博士号を取得した。

大学教員としての活動は、1997年に千葉大学大学院薬学研究科の助教授に就任したことから始まる。教育者および研究者としての基盤を確立した後、2000年には北里大学薬学部の教授に昇任し、研究室を主宰するなど中心的な役割を担った。2007年には共立薬科大学の教授として教鞭を執り、翌2008年には慶應義塾大学と共立薬科大学の統合に伴い、慶應義塾大学薬学部の教授となった。慶應義塾大学では薬学教育・研究の推進に尽力し、2013年には薬学部長として学部全体の運営を統括した。さらに2016年には、慶應義塾大学病院の薬剤部長も兼任し、大学における教育・研究のみならず、医療現場における薬剤師の専門性向上にも深く関与した。2019年には長年の教育・研究への貢献が認められ、慶應義塾大学名誉教授の称号を授与されるとともに、同大学薬学部の特任教授として引き続き後進の指導にあたった。

学術活動に加え、望月氏は日本の科学技術振興および社会貢献にも積極的に関わっている。2020年には、日本の科学者コミュニティを代表する機関である日本学術会議の第25期副会長に選出され、組織運営および科学者間の連携強化を担当した。また、国際医療福祉大学の特別顧問や、国際医学情報センターの顧問も務めるなど、その専門知識と経験を幅広い分野で活かしている。企業経営にも関与しており、2021年には大日本住友製薬の監査役を務め、翌2022年には社名変更に伴い住友ファーマの監査役となった。さらに、2023年には日本薬系学会連合の副会長に就任し、国内の薬学関連学会間の連携強化にも貢献している。

これらの多岐にわたる活動を通じて、望月氏は多くの栄誉に輝いている。2016年には日本医療薬学会より功績賞を授与され、同年に日本薬剤学会からは永井記念国際女性科学者賞を受賞した。また、2018年には慶應義塾大学より福澤賞が贈られるなど、その顕著な業績は高く評価されている。

望月眞弓氏は、製薬企業での経験、病院薬剤師としての実践、そして大学における教育・研究、さらには国の科学政策決定や企業経営に至るまで、薬学を取り巻く多様な領域で指導的な役割を果たしてきた。その活動は、日本の薬学の発展、医療の質の向上、そして科学技術の振興に不可欠な貢献をもたらし続けている。

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