朝露 (駆逐艦)

概要

「朝露（あさつゆ）」は、大日本帝国海軍が運用した初期の駆逐艦の一つであり、初代神風型駆逐艦の11番艦として建造された艦艇です。明治後期に竣工した本艦は、当時の帝国海軍の戦力整備の一翼を担いました。しかし、その活動期間は比較的短く、約7年後の座礁事故により運用継続が不可能となり、早期に海軍籍から除かれる運命をたどりました。

艦歴

駆逐艦「朝露」は、明治38年（1905年）2月15日にその艦名が与えられました。これは、日本海軍が推進していた艦艇増強計画に基づき、製造番号第11号として計画が進められていた艦艇に名付けられたものです。翌年の明治39年（1906年）4月22日には、帝国海軍の規定に基づき、正式に駆逐艦籍へと編入され、その種別が確定しました。

本艦の建造は、大阪鉄工所の桜島工場にて行われました。そして、明治39年10月16日、全ての工程を終えて無事に竣工を迎え、帝国海軍へと引き渡されました。竣工後、「朝露」は他の同型艦である神風型駆逐艦と共に、当時の日本近海における沿岸防衛や哨戒、あるいは訓練任務などに従事していたと考えられます。初代神風型は、日露戦争後の戦力維持・強化のために整備された艦型であり、速力と魚雷攻撃能力を重視した駆逐艦でした。朝露もまた、これらの能力を活かした任務に就いていたものと推測されます。

しかしながら、本艦の現役期間は長く続きませんでした。大正2年（1913年）11月9日、能登半島の七尾湾に存在する危険な暗礁の一つである大グリ暗礁において、不幸にも座礁事故を起こしてしまいます。この事故により、「朝露」の艦体は船底を中心に著しい損傷を負い、その被害は「大破」と報告されるほど深刻なものでした。

座礁事故による損傷は致命的であり、軍艦としての機能を回復させることは極めて困難と判断されました。この結果、大正3年（1914年）4月15日付をもって、「朝露」は帝国海軍の艦艇リストからその名を消すこととなり、除籍処分となりました。竣工から除籍までの期間は、わずか約7年半という短いものでした。

歴代駆逐艦長

「朝露」の比較的短い運用期間中、複数の海軍士官が駆逐艦長として本艦の指揮を執りました。記録によると、竣工後の明治39年7月18日には、遠矢勇之助少佐が最初の駆逐艦長（兼任）として着任しています。その後、岡村秀二郎大尉が専任として指揮を引き継ぎましたが、再び遠矢少佐が兼任艦長を務める期間がありました。以降も、末次綱吉大尉（兼任）、生野太郎八少佐、林直親大尉（兼任）、青木董平大尉、荒城二郎大尉、前田数馬大尉（兼任）、中原市介大尉、堀江豊雄大尉と、次々に艦長が交代しています。特に、座礁事故が発生した大正2年11月当時の艦長は藤田三他人大尉でした。藤田大尉は事故発生直前の大正2年10月14日に兼任で着任しており、事故後の同年12月1日には専任の艦長となっています。短い期間にこれほど多くの艦長が交代するのは、当時の駆逐艦隊の編成や人事慣例によるものと考えられますが、朝露も例外なく、その都度新たな指揮官の下で運用されました。歴代艦長たちの指揮の下、本艦は与えられた任務を遂行すべく活動していたのです。

まとめ

駆逐艦「朝露」は、大日本帝国海軍の初代神風型駆逐艦として誕生しましたが、その艦生は短いものでした。竣工後、約7年半にわたって帝国海軍の一員として活動したものの、大正2年に七尾湾で発生した座礁事故が決定的な損傷をもたらし、翌年には除籍されるという結末を迎えました。その短い艦歴は、初期駆逐艦の運用実態や、海難事故のリスクといった側面を現代に伝える貴重な記録と言えるでしょう。

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