荒城二郎

荒城二郎：激動の時代を駆け抜けた海軍中将

荒城二郎（あらき じろう）は、明治13年（1880年）に北海道で生まれ、昭和27年（1952年）に没した海軍軍人です。最終階級は海軍中将。彼は、激動の時代を生き抜き、海軍の発展に貢献しました。

生い立ちと初期のキャリア

荒城は、旧徳島藩洲本城城代稲田家の家臣の家系に生まれました。兄は陸軍少将、妹は井上達三の妻という家柄です。海軍兵学校29期を卒業後、日露戦争に「香港丸」「朝霧」乗組として出征し、軍人としてのキャリアをスタートさせました。その後、「扶桑」水雷長や「村雨」駆逐艦長などを歴任し、着実に昇進を重ねました。

海軍大学校と海外駐在

大正2年（1913年）には海軍大学校甲種11期を卒業。その後、シンガポールやドイツなど海外に駐在し、国際感覚を養いました。特にドイツでは、現地のブローカー、フリードリヒ・ハックとの親交を深め、ハインケル社との航空機売買契約や、ドイツ海軍から日本海軍への技術供与に関する文書を受け取るなど、軍事技術の導入に貢献しました。

第一遣外艦隊司令官として

帰国後、荒城は艦政本部で要職を歴任し、潜水艦のエキスパートとして知られるようになります。昭和元年（1926年）には、第一遣外艦隊司令官に就任し、中国の揚子江流域に派遣されます。当時、中国では蔣介石率いる国民政府軍が北伐に向けて勢力を拡大しており、情勢は不安定でした。荒城は、呉佩孚ら北洋軍閥との提携を図る一方で、唐生智や陳銘枢といった国民政府軍の要人とも交渉を重ね、日本側の権益保護と日本人居留民の安全確保に尽力しました。南京事件や漢口事件などの事態にも、冷静に対処し、その手腕を発揮しました。

その後

帰国後も、艦政本部で潜水艦の開発・整備に携わり、日本の潜水艦戦力の向上に貢献しました。昭和5年（1930年）には横須賀工廠長に就任、同年海軍中将に昇進。昭和7年（1932年）に予備役となりました。

退役後は、日本製鐵設立役員（取締役）や北樺太石油社長などを務め、実業界で活躍しました。

人となり

荒城は、米内光政と同期であり、無二の親友でした。二人の間では、互いの本音を語り合う手紙が交わされており、その一部は『米内光政の手紙』（高田万亀子 著）で公表されています。また、鈴木貫太郎内閣の組閣時には、岡田啓介から、海軍の人材として名前が挙がるなど、その人柄と能力は高く評価されていました。

栄典

荒城は、その功績により、数々の位階と勲章を授与されています。

正八位 (1903年)
従七位 (1904年)
正七位 (1906年)
従六位 (1911年)
正六位 (1917年)
従五位 (1921年)
正五位 (1926年)
従四位 (1930年)
正四位 (1932年)

また以下のような勲章を受けています。

勲四等瑞宝章 (1914年)
旭日小綬章 (1915年)
大正三四年従軍記章 (1915年)
* 勲三等瑞宝章 (1916年)

荒城二郎は、激動の時代に、海軍軍人として、実業家として、その才能を発揮し、日本の発展に貢献した人物として、記憶されるべきでしょう。

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