朝鮮人民軍戦略軍

朝鮮人民軍戦略軍は、朝鮮人民軍の管轄下にある戦略ミサイル部隊です。北朝鮮が独自に設計・製造した各種長距離大陸間弾道ミサイルを装備し、核兵器や通常型戦略ミサイルの統制を行っています。かつては朝鮮人民軍戦略ロケット軍と呼ばれていました。

概要

戦略軍が装備するミサイルは、スカッドミサイルを拡張・発展させたものが中心で、射程、ペイロード、精度が異なります。火星5号や火星6号など移動式ミサイルも存在しますが、テポドン1号は固定発射台を必要とします。配備されているミサイルの正確な数は不明ですが、北朝鮮には多数のスカッドCやノドン1などが配備されていると考えられています。主要なミサイル発射基地は東海岸のムスダン里にありますが、全国に小規模な発射基地が存在します。2012年には人工衛星の打ち上げに成功し、これは日韓のミサイル監視網を突破するものでした。

核実験の歴史

北朝鮮は建国以来、核兵器に関心を持っていました。当初はソ連や中国に支援を求めましたが、核武装に関する協力は得られませんでした。本格的な核開発は朝鮮戦争休戦後から始まり、ソ連との原子力開発に関する合意や研究用原子炉の供与を受けました。しかし、ソ連は平和利用に限定する立場を崩さず、中国からの支援も得られませんでした。

その後も核開発は秘密裏に進められ、1982年以降には寧辺に新たな原子炉が建設されていることが判明しました。アメリカの働きかけにより北朝鮮はNPTに加盟しましたが、核開発の疑惑は消えませんでした。1986年には高性能爆発実験の痕跡が確認され、原爆開発計画が進められている証拠とされました。その後も寧辺や泰川に大型黒鉛減速炉が建設され、国際問題化しました。

NPT脱退と核実験の実施

2003年、北朝鮮はアメリカの軍事的脅威を理由にNPTからの脱退を通告し、2005年には核兵器の保有を宣言しました。2006年には初の地下核実験を行い、事実上の核保有国となりました。NPT脱退は国際法上は有効と解釈されますが、アメリカは北朝鮮のNPT上の義務について判断を保留しています。

初期の原子爆弾は巨大でしたが、技術の進歩により小型化が可能になっています。米シンクタンクの研究者らは、原子爆弾の小型化は設計が初歩的であっても可能であると指摘しています。

核開発の継続とその目的

2006年以降、北朝鮮は複数回の核実験を実施し、弾道ミサイルに搭載可能なウラン爆縮型原子爆弾の小型化に成功したとされています。現在配備中の核兵器は原爆と考えられていますが、水爆や強化原爆の開発も進められている可能性があります。2010年時点では、最大で23個の核兵器を保有していると考えられています。

ミサイル開発も進められており、日本全土を射程に収めるノドンや、アメリカ本土に到達する長距離弾道ミサイルの開発も行われています。金正恩は「経済建設と核武力建設の並進路線」を掲げ、核保有の恒久化を宣言しました。アメリカや国際社会との対決こそが経済再建の道であると主張しています。

北朝鮮が核開発に固執する理由としては、体制保証、瀬戸際外交、外貨獲得、国威発揚、軍の威光、イラク戦争やリビアの崩壊の教訓などが挙げられます。近年では、ロシアのウクライナ侵攻も影響している可能性があります。

非核化合意とその不履行

1991年、南北は朝鮮半島の非核化に関する共同宣言を行いましたが、相互査察は実現しませんでした。北朝鮮はこれまで何度も非核化を約束しましたが、その約束は破られてきました。対話を時間稼ぎや支援獲得に利用し、合意を反故にしてきた歴史があります。そのため、北朝鮮の非核化宣言を鵜呑みにすべきではないという意見も多くあります。

北朝鮮は体制への脅威のために核開発を行っていると主張されており、制裁緩和や核容認は核拡散を招くという批判もあります。最大限の圧力をかけ続けることが北朝鮮に有効であるという意見もあります。また、北朝鮮は平和協定によって米軍を撤退させ、韓国を影響下に置くことを目的としているという指摘もあります。

北朝鮮が対話に応じるのは、経済的に困窮している時や、国際的な制裁に耐えられない時に限られるという指摘もあります。そして、その都度、会談や対話をテコにして制裁を突破することに成功してきました。北朝鮮との対話は、金一族の体制維持と核開発の既成事実化に利用される可能性があるとされています。

韓国は北朝鮮をなだめるために経済協力を行ってきましたが、北朝鮮の核開発を止めることはできませんでした。北朝鮮が核・ミサイルの「開発凍結」を約束する度に、日米韓などが支援を行ってきましたが、北朝鮮は裏で開発を続けてきました。対話と援助による北朝鮮の核・ミサイル開発放棄は、裏切りと失敗を繰り返してきたと言えます。

装備

スカッド
KN-02
ノドン
ムスダン
テポドン1号
テポドン2号
KN-08
北極星1号
北極星2号
北極星3号
北極星4号
北極星5号
銀河2号
銀河3号
火星12
火星14
火星15
火星17
* 火星18

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