朝鮮殖産銀行

朝鮮殖産銀行：日本統治下の朝鮮における特殊銀行

朝鮮殖産銀行は、日本統治時代の朝鮮において、拓殖事業への長期的な資金供給を目的として設立された特殊銀行です。その設立の背景、業務内容、そして戦後の変遷について解説します。

設立の経緯

1906年（光武10年）3月、大韓帝国において農工銀行条例が公布され、漢城農工銀行をはじめとする各地に農工銀行が設立されました。これらの農工銀行は、政府からの株式引受や無利子貸付を受けて営業を行っていました。日韓併合後の1917年（大正6年）には、6行の農工銀行が41の支店を持つまでに成長しました。

しかし、1918年（大正7年）6月12日に朝鮮殖産銀行令が発布され、同年10月1日にはこれらの農工銀行を合併する形で朝鮮殖産銀行が設立されました。設立当初の資本金は1000万円、本店は京城に置かれました。その後、1920年（大正9年）には資本金は3000万円に増資されています。

業務内容

本店は京城の南大門通りに置かれ、50以上の支店を展開していました。払込資本金の10倍まで債券を発行できる特権を持ち、主な業務内容は以下の通りです。

不動産担保貸付
漁業権担保貸付
財団抵当貸付
農工業者への無担保貸付
公共団体への貸付
金融組合その他産業上の非営利法人への無担保貸付
商品を質とする貸付
有価証券を質とする貸付
為替
公共団体または殖産会社の公社債の引受
* 信託業務

また、預金や保護預かり業務も行っており、朝鮮総督の認可を得て他の銀行や東洋拓殖会社の業務を代行したり、公共団体の金銭出納を取り扱うことも可能でした。さらに、朝鮮総督の指定により、普通銀行と同様の貸付、当座貸、割引、貯蓄預金なども行っていました。

産米増殖計画への関与

朝鮮殖産銀行は、朝鮮総督府が推進した産米増殖計画を支援する役割も担っていました。この計画は、朝鮮における米の生産量を増加させ、日本への米の供給を安定させることを目的としていました。しかし、実際には、朝鮮の農民からの収奪を強化し、生活を困窮させる結果を招いたという批判もあります。

第二次世界大戦後

1943年時点での行員数は498人で、そのうち150人が朝鮮人でした。第二次世界大戦終結後の1945年9月30日、GHQ（連合国軍最高司令官総司令部）は日本政府に対し、「植民地銀行、外国銀行及び特別戦時機関の閉鎖」に関する覚書を交付しました。これにより、朝鮮殖産銀行は即時閉鎖が決定されました。

しかし、朝鮮半島に残存した部分は、行名を韓国殖産銀行に改称して実質上存続しました。その後、1954年には韓国産業銀行法に基づき、大韓民国の政府系金融機関である韓国産業銀行となりました。

朝鮮殖産銀行は、日本統治時代の朝鮮における経済において重要な役割を果たした銀行であり、その歴史は、当時の朝鮮の社会や経済状況を理解する上で重要な手がかりとなります。

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