朝鮮民族主義歴史学

朝鮮民族主義歴史学

朝鮮民族主義歴史学とは、民族的または人種的視点から朝鮮の歴史を中心に研究する学問です。この歴史的枠組みは、20世紀初頭に日本の植民地支配から独立を目指す運動の一環として発展しました。

背景と概要

朝鮮民族主義歴史学は、主に申采浩の提唱によって広まりました。彼は、朝鮮の独立意識を高めるため、朝鮮民族の歴史はその祖先である檀君に起源があるとし、彼を朝鮮民族の象徴として位置づけました。申は「読史新論」の中で、朝鮮の歴史を民族の視点から捉え直し、古代の朝鮮王国が一度でも満洲の広範囲を支配していたとする力強い主張を展開しました。このように、朝鮮民族のアイデンティティを強化することが、この歴史学の重要な目的でした。

当初、朝鮮の学者たちは、日本の歴史学や中国の歴史観に疑問を持ち、これらが朝鮮の特質を損なうものであると主張しました。彼らは、従属的な歴史観に代わる新たな視点を求め、新たな民族意識を形成することに努めました。特に、申采浩の学問はその後も多くの民族主義者たちによって引き継がれ、朝鮮の歴史の重要性が再認識されるきっかけとなりました。

戦前の民族主義歴史家たち

1910年代から1920年代、申や朴殷植、崔南善といった知識人たちは、植民地時代における朝鮮の歴史認識を確立するために活動しました。他国の歴史学と一線を画すべく、彼らは朝鮮の文化と独自性を強調し、外国との関係において朝鮮が持っていた「自主性」を再評価しようとしました。これにより、彼らの歴史観は朝鮮の独立運動を支える重要な基盤となりました。

戦後の影響

第二次世界大戦後、韓国と北朝鮮における民族主義的な歴史観はそれぞれの政治体制に影響を受けつつも、共通して民族主義的なテーマを強調し続けました。両国の歴史学に見られる民族主義的傾向は、1960年代以降、統一の議論や抵抗運動の中でますます顕著になりました。特に韓国では、朝鮮の伝統や独自性が評価される中で、これに反する歴史観が否定される傾向が見られました。

一方、北朝鮮では、中華思想や日本の歴史観に対抗する形で、民族の独立性を強調する歴史観が強化されました。この点において、申采浩の思想は現在の北朝鮮の歴史学にも影響を与えており、彼が唱えた民族の精神が引き続き重視されています。

遺産と現在

朝鮮民族主義歴史学は、その後の韓国と北朝鮮の双方の歴史学において、重要な位置を占めています。申采浩を始めとする学者たちの議論は、今日まで受け継がれ、朝鮮のアイデンティティ形成に大きな影響を及ぼすものとなっています。また、民族の起源や歴史的領土に対する見解も、現代における地域主義やアイデンティティ政治において重要な役割を果たしています。

朝鮮民族主義歴史学は、単なる学問にとどまらず、現在の韓国と北朝鮮の関係や、朝鮮半島の政治的、文化的状況の形成にも寄与しているのです。

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