木々高太郎

木々高太郎: 日本の大脳生理学者・作家

木々高太郎（きぎ たかたろう、1897年5月6日 - 1969年10月31日）は、日本における大脳生理学の権威であり、推理小説と詩においても評価される作家です。彼は山梨県の医家に生まれ、本名は林髞（はやし たかし）です。1937年には直木賞を受賞し、特に探偵小説の分野で著名です。また、彼の勧めた小麦食の推進や、新しい食文化の提唱が後の世にも影響を与えています。

生涯と上京のきっかけ

木々は山梨県の西山梨郡に生まれ、幼少期から医学に親しむ環境で育ちました。甲府市に移った彼は、甲府市立湯田尋常小学校で学び、その後山梨県立甲府中学校に進学。学生時代には詩作に励み、同校の誌に散文や短歌を投稿しました。1915年に甲府中学校を卒業後、詩人の福士幸次郎に師事し、上京。そこで多くの文人たちと親交を深め、同人誌に詩を発表するなど、文学的活動を開始しました。

大脳生理学者としての歩み

彼は1918年に慶應義塾大学医学部予科に入学し、1924年に同医学部を卒業。その後、慶應義塾大学の生理学教室に助手として勤務し、1928年には医学博士号を取得しました。博士論文のテーマは「神経刺激電流の滑走に就て」です。1929年から1932年にかけては、イワン・パブロフのもとで条件反射学の研究にも従事しました。

探偵小説家としてのデビュー

木々は医学の知識を活かし、文学にも挑戦します。探偵小説家として最初の作品「網膜脈視症」を発表し、以降「睡り人形」や「青色鞏膜」など、多数の短編小説を執筆しました。彼は探偵小説の芸術性を主張し、甲賀三郎との論争でもその立場を貫きました。「探偵小説芸術論」では、探偵小説も文学の一部であるとする意義を強調しました。

直木賞受賞と新たな時代の幕開け

1937年には「人生の阿呆」で第4回直木賞を受賞し、その名が広まりました。この年、探偵小説の専門誌『シュピオ』を創刊し、探偵小説の理論を追求しながら、新人作家の育成にも力を入れました。

戦後の活動と食文化への影響

戦後、木々は再び執筆活動を再開し、国際的な科学文化に貢献しました。1945年に林研究所を設立し、1946年には慶應義塾大学医学部教授となります。1951年以降は探偵作家クラブの会長として、推理小説の普及にも尽力しました。また、1960年には「頭脳パン」という著書を発表し、主食の在り方について新しい視点を提案しました。

晩年と遺産

晩年には詩や評論も発表し続け、1969年には第二詩集『月光と蛾』を刊行しましたが、未完に終わった第三詩集があったことから、創作意欲は衰えを知らなかったことが伺えます。73歳で心筋梗塞により他界するまで、日本の文学界と科学界に大きな影響を与え、今なお多くの読者に親しまれています。彼の業績は、文学と科学が交錯する分野での重要な指針を提供していると言えるでしょう。

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