木寺英史

木寺英史（きでら えいし）氏は、1958年にこの世に生を受けた日本のスポーツ研究者です。現在、九州共立大学の教授を務め、スポーツ科学の分野で教育・研究活動を展開しています。また、自らが主宰する「なみあし身体研究所」の代表として、身体への負担を軽減し、より効率的な動作を可能にする独自の身体操作法「なみあし」の理論と実践方法の研究・普及に力を注いでいます。武道の分野にも造詣が深く、剣道では教士七段という高段位を取得しています。

木寺氏の経歴を見ると、熊本県に生まれ、早稲田実業高校を経て、1983年に筑波大学体育専門学群を卒業しました。大学卒業後は、まず教育者としての道を歩み始め、福岡県八女郡上陽町立北川内中学校で教壇に立ちました。その後、高等専門学校に移り、1991年から久留米工業高等専門学校の講師として勤務。同校では助教授、准教授へと昇任し、教育と研究のキャリアを着実に積み重ねました。2007年には同校の准教授となり、2009年には奈良工業高等専門学校の准教授に着任しています。そして、2012年からは現在の所属である九州共立大学スポーツ学部の准教授となり、現在は教授として後進の指導にあたっています。

木寺氏の研究活動の中心は、「なみあし」と呼ばれる独自の身体操作法にあります。これは、古来の歩行法や武術における体の使い方にヒントを得たもので、無駄な力を使わずに、身体本来の構造を生かした自然で滑らかな動きを目指します。木寺氏は、このなみあしを習得することで、スポーツパフォーマンスの向上はもちろんのこと、日常生活での動作の改善や、怪我の予防にも繋がると提唱しています。身体の軸を安定させ、効率的な体重移動を行うための具体的な方法論を、科学的な分析に基づきながら研究・指導しています。なみあし身体研究所での活動を通じて、専門家から一般市民まで、幅広い層にこの身体操作法の普及を図っています。

剣道教士七段という剣道家としての側面は、木寺氏の研究にも深く関わっています。伝統的な剣道の技術や体の使い方を、スポーツ科学や身体操作法の観点から分析し、「なみあし」の理論を剣道に応用する研究を行っています。著書の中にも剣道に関するものが多く見られ、武道の持つ身体論と現代のスポーツ科学を結びつける試みを行っています。このことは、単なる技術論に留まらず、身体の使い方そのものを見直すという、氏の学際的なアプローチを象徴しています。

木寺氏の著作は多岐にわたり、その研究内容の幅広さを示しています。主なものとして、『本当のナンバ 常歩（なみあし）』は、なみあし理論の基礎を解説しています。『実践常歩剣道 進化するナンバ』や『常歩(なみあし)剣道伝統的打突法 カギは「左荷重」にあった』は、剣道におけるなみあしの実践方法を詳述したものです。『錯覚のスポーツ身体学』では、スポーツにおける身体感覚の捉え方についてユニークな視点を提供しています。また、より一般的なテーマとしては、『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みが取れる』や『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』など、日常の歩き方に関するアドバイスを提供する書籍も執筆しています。『日本刀を超えて 「身体」と「竹刀」から考える剣道論』では、剣道に関する深い洞察が述べられています。これらの単著に加え、小田伸午氏をはじめとする他の研究者との共著も多数発表しており、『剣士なら知っておきたい「からだ」のこと』『常歩式スポーツ上達法』『ゴルファーなら知っておきたい「からだ」のこと』『日本人に今いちばん必要な超かんたん!「体つくり」運動』などがあります。これらの著書を通じて、木寺氏は専門分野の知見を多くの人々と共有し、身体への意識を高める啓発活動を行っています。

スポーツ科学と武道の知見を融合させ、「なみあし」という独自の身体操作法を研究・提唱する木寺英史氏は、身体の可能性を引き出し、より健康的で効率的な体の使い方を追求する研究者として、その活動は多方面から注目されています。教育者、研究者、そして剣道家という多様な顔を持ちながら、身体に関する深い洞察に基づいた理論と実践を広く伝えています。

なみあし身体研究所
九州共立大学

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