木川田一隆

木川田一隆の生涯と業績

木川田一隆（きがわだ かずたか、1899年8月23日 – 1977年3月4日）は、日本の実業界で重要な役割を果たした人物であります。彼は1950年代から1960年代にかけて、東京電力社長や経済同友会の代表幹事を歴任し、特に「企業の社会的責任」という概念を広めた哲人的なリーダーとして知られています。

来歴

木川田は福島県伊達郡梁川町（今の伊達市）で生まれました。彼の教育は厳格であり、旧制角田中学から旧制山形高校を経て、東京帝国大学経済学部に進学。しかし、大学において彼は河合栄治郎の思想に魅了され、理想主義的な自由主義に深く傾倒しました。この影響を受けて、彼は労働法を学ぶことに熱心でしたが、1926年の三菱鉱業の採用面接においてその知識が裏目に出てしまい、採用されることはありませんでした。

その後、彼は東京電燈に入社。ここで「電力の鬼」と称される松永安左エ門のもとで多くのことを学び、民間企業人としての精神を養います。1951年、戦後の電力業界再編によって新たに設立された東京電力に入社し、常務、副社長を経て1961年には社長に就任しました。

経済同友会での活動

1963年には経済同友会の代表幹事に就任し、その在任中に「協調的競争」という概念を掲げました。彼は産業界に対して自主的な競争環境の整備を求め、人間尊重の理念に基づく経済活動の推進を提唱しました。この取り組みの一環として、1966年に設立された「産業問題研究会」は、業界のさまざまな問題を解決するための重要な場となりました。

木川田は、日本の産業界を広く見渡し、企業間の協力と健全な競争の必要性を認識しており、政府からの無理な介入を阻むための活動にも尽力しました。特に、八幡製鐵と富士製鐵の合併（新日本製鐵の誕生）においても、重要な役割を果たしました。

日中国交回復に向けた努力

木川田はまた、日中国交回復のための活動にも非常に力を入れました。1971年には、自邸前に爆発物が仕掛けられるという妨害に遭いながらも、風邪をひいている中で周恩来首相との会談のために訪中しました。この不屈の姿は、彼の理想に対する情熱と信念を物語っています。

後半生と死去

1971年には東京電力社長を水野久男に譲り、その後会長に就任。さらに、1974年には電気料金の値上げに際して、企業としての政治献金を取り止めるという大胆な措置を取ります。彼は常に現実に即した理想の実現を追求し、その姿勢は多くの支持を集めました。アメリカのメディアでは、彼のことを「Business Statesman」と評しました。

1977年に彼は77歳で亡くなりました。彼の死後、新聞は彼の温厚で誠実な人柄や企業に対する社会的責任の重要性を訴えた姿勢を称賛しました。木川田は生前、「勲章を欲しがるのは老害の証拠」と語り、叙勲を固く拒否したことでも知られています。

著書

木川田の考えや思想は彼の著作にも表れています。代表的な著書には、「私の履歴書」や「人間主義の経済社会」などがあり、彼の思想と実践が後世に語り継がれています。

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