梁川町

梁川町（やながわまち）の歴史と文化

梁川町は、かつて福島県伊達郡に存在した町です。2006年 1月1日、伊達町、保原[[町]]、霊山町、月舘町と合併し、伊達市となりました。

地理的特徴

町の中心部を阿武隈川と広瀬川が流れ、西は福島盆地の平野部、東は阿武隈高地の山間部という、多様な地形を持っています。西部は人口密度が高く、南部は福島市に近いため新興住宅地も存在しましたが、少子化の影響で人口は減少傾向にありました。気候は内陸性盆地型で、夏は猛暑となり、冬は氷点下になることもありますが、雪国とまではいえない地域でした。

歴史

梁川の地名は、阿武隈川や広瀬川で鮭漁のために簗が築かれていたことに由来します。古くは「簗川」と表記されていましたが、1711年に初代梁川藩主の松平義昌によって「梁川」に改められました。

戦国時代には、伊達氏が梁川城を本拠地とし、奥州探題に任じられたことで繁栄しました。その後、蒲生氏や上杉氏の支配を経て、江戸時代には幕府直轄地や梁川藩となり、幕末には松前藩が一時的に移転したこともありました。

養蚕業の隆盛

幕末から昭和初期にかけて、梁川町は養蚕業で栄え、「蚕都」とも呼ばれていました。特に、中村善右衛門が開発した温暖育技術は、繭の品質向上に大きく貢献し、全国から買い付け人が集まるほどでした。町には多くの旅館や金融機関が建ち並び、歌舞伎座も存在しました。日東紡績株式会社（現：日東紡）も、梁川を中心とした福島盆地の養蚕産業と深い関わりがあります。また、梁川の養蚕文化は、国立歴史民俗博物館にも展示されています。

養蚕業から果樹栽培へ

生糸相場の暴落により、養蚕業は衰退し、果樹栽培へと転換が進みました。特に、五十沢地区で考案された「あんぽ柿」は特産品として有名です。

梁川と仙台のつながり

梁川の中央を流れる広瀬川は、仙台を流れる広瀬川と名前が共通しています。伊達政宗が伊達郡を没収されて仙台に移った際に、故郷の川の名をつけたという説もありますが、実際には仙台の広瀬川の方が古くからその名で呼ばれていました。

地域の構造

梁川町には、公立病院や高等学校、中学校、小学校、幼稚園、保育所/保育園などの教育・医療機関が存在しました。また、農業地帯では農繁期に季節保育所が開設されていました。

行政

梁川町は北海道松前町と姉妹都市提携を結んでいます。これは、幕末に松前藩が一時的に梁川に移転したという歴史的経緯に基づいています。

合併の経緯

平成の大合併の流れの中で、伊達郡内の9町による合併協議が行われました。しかし、一部の町が離脱し、最終的に梁川町を含む5町が合併して伊達市が誕生しました。新市名は公募で「伊達市」に決定しましたが、北海道にも同名の市があるため、総務省からの許可を得ています。市役所は、旧保原[[町]]役場を本庁舎、旧梁川町役場を分庁舎として使用し、各町の独自性を残す分散型合併となりました。

産業

農業が盛んで、特に果樹栽培が有名です。工業団地も存在し、太陽誘電グループの工場は、国内最大の光ディスク生産工場となっています。

養蚕業の詳細

梁川の養蚕業は、江戸時代中期から奨励され、特に中村善右衛門の温暖育技術により大きく発展しました。天領時代には、梁川の生糸は幕府指定品となっていました。また、宍戸氏は三井家と提携して生糸を江戸に出荷し、その財力で幕府の再建に貢献しました。

上垣守国は、信達地方を訪れて研究し、その成果を「養蚕秘録」としてまとめ、シーボルトがヨーロッパに持ち帰ったことで、ヨーロッパの養蚕技術の発展にも寄与しました。

明治時代には、養蚕景気にあやかって多くの銀行が乱立しましたが、養蚕業の衰退とともに衰退しました。現在、梁川で養蚕農家は数軒しか残っていませんが、手作りの真綿は高い評価を受けています。

梁川の養蚕文化

梁川の養蚕文化は、国立歴史民俗博物館で常設展示されており、中村善右衛門が発明した蚕当計のレプリカも展示されています。実物は梁川小学校に現存しています。

養蚕業の年表

梁川の養蚕業に関する年表は以下の通りです。

正保2年（1645年）：養蚕業が起こり、市が立つ。
万治1年（1658年）：信達の生糸が「登世糸」として京に出荷される。
宝暦7年（1757年）：幕府が蚕糸、蚕種に課役。
明和6年（1769年）：登世糸が盛んになる。
安永2年（1773年）：伊達郡・信夫郡が奥州蚕種本場の銘を獲得。
寛政8年（1796年）：田口留兵衛が火蚕法の研究を開始。
天保9年（1838年）：田口留兵衛が温暖育を完成。
弘化4年（1847年）：中村善右衛門が蚕当計を発明。
嘉永2年（1849年）：中村善右衛門が蚕当計秘訣を刊行。
安政5年（1858年）：中井閑民が養蚕精義を刊行。
* 文久1年（1861年）：養蚕講が組織され、蚕種銘鑑を刊行。

化石

梁川町を流れる広瀬川の河床では、約2000万年前のほ乳類パレオパラドキシアの化石が発見されています。梁川町商店街のショッピングモール「パレオ」は、この化石にちなんで名付けられました。

交通

梁川町には、国道349号線や阿武隈急行線が通っており、福島交通の路線バスも利用できました。

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