木曽三川分流工事

木曽三川分流工事

概要

木曽三川分流工事は、1887年から1912年にかけて行われた河川改修事業であり、木曽川、長良川、揖斐川という三つの川を完全に分流することを目的としていました。この計画は、オランダ人技師のヨハニス・デ・レーケにより策定され、当時の日本の治水技術向上に寄与しました。工事は、「分流工事」「改修工事」「明治治水」とも呼ばれ、完遂することで地域の水害を大幅に軽減しました。

地域の歴史

分流工事以前

木曽三川が流れる下流域では、古くから大雨による水害が頻繁に発生し、周囲の地域は被害を受けてきました。江戸時代から続くこの問題は、湿地と多くの網の目のような河川が交錯する地形が一因でした。1586年の大洪水以降、豊臣秀吉のもとで治水が試みられましたが、根本的な解決には至っていませんでした。

御囲堤の影響

1609年には、御囲堤が建設され尾張国の防御が強化されましたが、逆に水害が増加しました。これに対抗して幕府は治水工事を命じ、1737年に大がかりな工事が行われましたが、地元の人々には悲劇的な結果となりました。18世紀末から19世紀初頭までには、工事や自然災害の影響で破堤が頻発し、その対策の必要性が高まりました。

分流工事の開始

明治時代に入ると、地域の治水対策を強化する動きがさらに進み、1871年には名古屋藩が外国からの技術者を求める声を上げました。そんな中、デ・レーケの派遣が決まり、1877年に最初の調査が行われました。この調査により、木曽川の分離が水害の改善につながると判断され、工事計画が具体化していきました。

相次ぐ工事

工事プロジェクトは1887年から1912年までの間に4期に分かれ、最初の期では木曽川に限定され、高須輪中や長島輪中の堤防築造が進められました。この期に完了した工事により、長良川と揖斐川も次第に分かれていきました。

第2期では、木曽川と長良川の完全分離が達成され、さらなる工事が行われました。その後、第3期および第4期では、揖斐川の水流改善に向けた取り組みが中心となりました。最終的に1911年までにほぼ全ての工事が完了し、1912年に正式に完了を迎えました。

工事の影響

分流工事により、多くの土地が買収され、約1800戸が移転することになりました。その背景には人口減少や土地収用に関する紛争もありましたが、工事後は地域の水害が大幅に減少しました。また、舟運のルートも大きく変更されて、木曽川や揖斐川の通行が改善されました。

実際の治水効果も顕著で、水害による死者は数十人にまで減少しました。この工事の成功は、地域住民の生活環境を劇的に変えただけでなく、農業生産力の向上にも寄与しました。特に水稲の生産量は倍増し、昔とはまったく異なる農業環境が形成されました。

デ・レーケの功績

デ・レーケは、日本での長い職業生活の中で歴史的な改良をもたらしました。彼の影響は深く、日本の治水の技術向上に貢献し、その功績は今日でも多くの人々に知られています。三川分流工事の成功は、彼の名を歴史に刻むものでした。戦後、デ・レーケの業績は再評価され、1987年には公園に記念碑が建てられるなど、今もその功績が称えられています。

もう一度検索