木曽川上流改修工事

木曽川上流改修工事

木曽川上流改修工事は、大正12年から昭和初期にかけて行われた木曽川水系の重要な河川改修事業です。この事業は「大正改修」とも称され、古くから続く水害の被害を軽減するために実施されました。

上流改修以前の状況

木曽川、長良川、揖斐川の三川は、流域で水害を引き起こしていました。人々は輪中を形成しながら水と闘って暮らしていましたが、特に下流地域では1609年に完成した「御囲堤」の影響で水害が増加。江戸時代には薩摩藩の宝暦治水など、いくつかの試みが行われたものの、根本的な解決には至りませんでした。その後、明治になり近代的な治水工事が求められ、1887年から始まった「明治改修」により木曽三川の分流化が進み、大きな効果を上げました。

しかし、上流や支川の治水は未解決で、水害頻発の中で上流改修の必要性が高まりました。特に揖斐川上流部の状態が悪化しており、下流部の治水にも影響を与えていました。このため、官民一体となった上流改修運動が盛り上がりを見せました。

上流改修の請願と施工

岐阜県は上流改修の必要性を強く訴えており、1886年には早期施工要請が行われましたが、内務大臣は下流の改修を優先する意向を示しました。下流改修が着工される1888年には、岐阜県が揖斐川の測量を求めるなど積極的に要望を続けました。

1921年、帝国議会において上流改修が「向こう10箇年継続事業」として予算が承認され、1923年から工事が開始されました。支川改修に関する計画も進み、多くの河川が対象となりました。その後、工事は進むものの、関東大震災や世界恐慌、さらには太平洋戦争の影響で数度の工期延長を余儀なくされ、最終的な竣工は1950年代とされています。

上流改修の内容

上流改修の主な目的は以下の3つに集約されます。
1. 河川の整理を行い本川を一つに絞ること。
2. 常に水害に悩まされていた遊水地を改善すること。
3. 洪水を早く流すために、屈曲部を直線化し狭窄部を拡幅すること。

この工事の結果、全体の堤防が拡大され、洪水に対する耐性が向上しました。

揖斐川の改修

揖斐川の改修は1923年から開始され、重点的に行われました。この改修により、多くの地域が新たに整備され、洪水が起こりにくい状態に改善されました。特に呂久地区などでの改修が重要視され、各所で新たな堤防や開削が行われました。

長良川の改修

長良川の工事も1923年から始まり、重要な改修地点での整備が行われました。現河道の拡幅や新河道の開削が進められ、災害に対する対策が強化されました。

木曽川の改修

木曽川においても1924年から工事が進められ、河道の整理が行われました。新川の設置や堤防の補強が行われ、洪水時の被害が軽減されることを目指しました。

上流改修の影響

これらの大規模改修により、河川敷の拡幅が進み、常時水が流れる低水路と洪水時のみ水が流れる高水敷が明確に分かれるようになりました。高水敷は農地や公園、宅地に使われるなど、地域に多様な利点をもたらしました。また、河川開削によって新たな橋梁の整備が必要となり、交通網の発展にも寄与しました。

改修工事は、地域住民にとって安全を高める重要な試みであり、今後もその影響が続くことでしょう。

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