木曽川橋梁 (名鉄名古屋本線)

木曽川橋梁は、愛知県一宮市北方町と岐阜県羽島郡笠松町若葉町の間で、一級河川である木曽川を跨ぐ鉄道専用の橋梁です。名古屋鉄道（名鉄）の主要路線である名古屋本線の一部を構成しており、具体的には木曽川堤駅と笠松駅の間に位置しています。

概要と特徴

この橋が架けられている地点は、周辺において木曽川の川幅が最も狭くなっている箇所です。これは、建設時のコストを抑えるために選ばれた地形的な特徴であり、実際、上流にあるJR東海道本線の木曽川橋梁と比較しても100メートル以上短い構造となっています。

この建設地点の選定には、当時の鉄道会社の戦略も大きく関わっています。旧名古屋鉄道が名古屋と岐阜を結ぶ新線を建設するにあたり、すでに笠松駅（現在の位置より南寄り）までの笠松線を有していた美濃電気軌道を合併しました。その美濃電気軌道の路線網を効率的に活用するため、現在の笠松駅方面に接続する必要があり、結果としてこの川幅が狭い地点への架橋が最も合理的であったと考えられています。

ただし、この経路選択には課題も存在します。橋梁およびその前後の線形は、既存路線への接続を優先したために曲線となっており、現在も列車はこの区間で速度制限を受けることになります。この曲線区間は、名古屋本線における栄生駅と西枇杷島駅の間の区間と同様に、全線にわたる高速化を進める上でのボトルネックの一つとされています。

構造形式としては、7つの連続したトラス桁で構成されており、下路式（線路がトラスの下にある形式）の曲弦ワーレントラス橋が採用されています。一径間の長さ（支間）は67.06メートルです。

諸元

木曽川橋梁の主な仕様は以下の通りです。

完成年: 1934年（昭和9年）
供用開始: 1935年（昭和10年）4月29日
橋長: 484.5メートル
軌道: 複線
位置: 愛知県一宮市北方町北方 - 岐阜県羽島郡笠松町若葉町

沿革

木曽川橋梁の建設に至る経緯と、その後の歴史は以下の通りです。

1928年（昭和3年）4月: 当時の名古屋鉄道（旧）が、岐阜方面への路線延伸計画を開始。その第一段階として、押切町駅と新一宮駅（現在の名鉄一宮駅）の間が開業しました。
1930年（昭和5年）8月: 旧名古屋鉄道は、笠松駅方面に路線を持っていた美濃電気軌道を合併し、その路線網を取り込みました。
1930年（昭和5年）9月: 旧名古屋鉄道が社名を名岐鉄道へと変更します。
1931年（昭和6年）: 木曽川橋梁の建設工事が開始されました。
1934年（昭和9年）: 木曽川橋梁が完成します。
1935年（昭和10年）4月29日: 名岐鉄道の新たな路線である名岐線（新一宮 - 新笠松間）が開業。同時に現在の笠松駅にあたる新笠松駅も開業しました。これにより、須ヶ口駅と新岐阜駅（現在の名鉄岐阜駅）を結ぶ名岐線が全通し、押切町駅と新岐阜駅の間が一本の路線で繋がりました。開業と同時に、デボ800形電車を用いた押切町 - 新岐阜間の直通特急運転が開始され、所要時間は34分でした。
1948年（昭和23年）5月12日: 名岐線の架線電圧が従来の600Vから1500Vに昇圧されました。
* 1948年（昭和23年）5月16日: 豊橋駅と新岐阜駅の間が正式に名古屋本線と命名され、豊橋から新岐阜までの直通運転が開始されました。

その他

かつて、木曽川橋梁を渡ってすぐ、笠松駅とは木曽川を挟んで反対側の笠松町内に、東笠松駅が存在していました。しかし、利用者の減少に伴い、この駅は2005年（平成17年）1月29日に廃止されています。

木曽川橋梁は、完成から80年以上が経過した現在も、名鉄名古屋本線の重要な橋梁として、愛知県と岐阜県を結ぶ鉄道輸送を支え続けています。

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