木材保存剤

木材保存剤は、木造住宅をシロアリや木材腐朽菌などの有害な生物から保護するために使用される薬剤です。これらの生物は木材を劣化させ、建物の構造的な安全性や耐久性を損なう可能性があります。木材保存剤は、これらの被害を防ぐために重要な役割を果たします。

一般的に、木材保存剤は防腐効果と防蟻効果の両方を兼ね備えています。防腐効果とは、木材腐朽菌の繁殖を抑制し、木材の腐朽を防ぐ効果のことです。一方、防蟻効果とは、シロアリが木材に侵入するのを防ぎ、食害から守る効果のことです。単独の効果を持つ薬剤は、それぞれ防腐剤、防蟻剤と呼ばれます。

木材保存剤は、その有効成分によって様々な種類に分類されます。

クレオソート油：古くから使用されている木材保存剤で、防腐・防虫効果があります。しかし、独特の臭気があり、取り扱いには注意が必要です。
クロム・銅・ヒ素（CCA）系木材保存剤：優れた防腐・防虫効果を持ちますが、ヒ素が含まれているため、環境への影響が懸念されています。
第四級アンモニウム化合物（AAC）系木材保存剤：比較的安全性が高く、環境への負荷も少ないとされています。
銅・第四級アンモニウム化合物（ACQ）系木材保存剤：AAC系をベースに、銅を配合することで防腐効果を高めています。
銅・アゾール化合物（CUAZ）系木材保存剤：防腐効果が高く、幅広い菌類に対して有効です。
ホウ素・第四級アンモニウム化合物（BAAC）系木材保存剤：ホウ素は、哺乳類への毒性が低いとされています。
第四級アンモニウム・非エステルピレスロイド化合物（SAAC）系木材保存剤：即効性があり、シロアリに対する忌避効果も期待できます。
アゾール・第四級アンモニウム・非エステルピレスロイド化合物（AZAAC）系木材保存剤：SAAC系をベースに、防腐効果のあるアゾール化合物を配合しています。
脂肪酸金属塩（NCU-E、NZN-E、VZN-E）系木材保存剤：比較的安全性が高く、木材への浸透性が良いとされています。
ナフテン酸金属塩（NCU-O、NZN-O）系木材保存剤：脂肪酸金属塩と同様の特性を持ちますが、より高い防腐効果が期待できます。
アゾール・ネオニコチノイド化合物（AZN）系木材保存剤：ネオニコチノイド系殺虫剤を配合しており、シロアリに対して高い効果を発揮します。

過去には、発癌性物質や重金属を含む木材保存剤が使用されていました。これらの薬剤を使用した建築廃木材は、環境汚染を引き起こす可能性があり、適切な処理が求められています。しかし、現在では、人体や環境への影響が少ない普通物に分類される薬剤が主流となっています。

木材保存剤は、木造住宅を長持ちさせるために不可欠なものです。しかし、使用にあたっては、薬剤の特性を理解し、適切な方法で処理を行うことが重要です。

参考資料

日本工業規格 JIS K 1570 木材保存剤の性能試験方法及び性能基準

関連情報

殺虫剤の一覧
殺虫剤
化学的防除
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クロム銅ヒ素系木材保存剤
シロアリ
殺菌剤 (農薬その他)
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志賀泰山

外部リンク

* 社団法人　日本木材保存協会

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