木村登志男

木村 登志男（きむら としお）

1943年（昭和18年）3月15日生まれ。日本の実業家であり、後に教育者としても活動した。東京都で生まれ、亀戸で少年時代を過ごした。

横浜国立大学経済学部にて経済学を学び、同大学の軟式庭球部に所属。卒業後、1965年（昭和40年）に諏訪精工舎（現セイコーエプソン）に入社し、そのキャリアをスタートさせた。

セイコーエプソンでは、多岐にわたる部門で重要な役割を担った。1985年（昭和60年）には電子機器事業本部長に就任し、技術革新が進む分野の責任者を務める。続いて、1988年（昭和63年）には総括管理本部副本部長（企画担当）として経営企画の中枢に関与。1991年（平成3年）にはシステム企画開発本部長となり、事業戦略を推進する部門を率いた。翌1992年（平成4年）には取締役コンピュータ・システム事業部長に就任し、主力事業の一つを統括する経営陣の一員となる。

1993年（平成5年）、国内販売戦略の要であるエプソン販売株式会社の代表取締役社長に就任。市場の変化に対応し、国内におけるエプソンブランドの地位確立に尽力した。1994年（平成6年）には親会社であるセイコーエプソン株式会社の常務取締役に昇進。さらに1997年（平成9年）には専務取締役に就任し、グループ全体の経営における影響力を増した。

キャリアの頂点の一つとして、2003年（平成15年）からは代表取締役副社長CFO（Chief Financial Officer：最高財務責任者）を務めた。当時の草間三郎代表取締役社長と共に経営の重責を担い、特に東京証券取引所市場第一部への上場という、企業にとって歴史的な一歩となるプロジェクトを主導。財務・経営戦略の専門家として、その手腕を発揮し、エプソンのさらなる発展に貢献した。

2006年（平成18年）にセイコーエプソンを退任。その後は実業界での豊富な経験を活かし、教育の道へ進んだ。法政大学大学院の専門職大学院イノベーション・マネジメント研究科にて教授を務め、自身の経営哲学や実務経験を次世代のビジネスリーダーたちに伝えた。大学院では、企業経営、イノベーション戦略、組織マネジメントなどに関する講義を担当し、研究活動にも従事した。

その研究成果の一部は著書として発表されており、特にセイコーエプソンに関する詳細な考察が収められている。法政大学イノベーション・マネジメント研究センターから出版された著作には、『セイコーエプソン・事業多角化の起源』、『セイコーエプソンと私 : 幸運な41年間の軌跡』といった自伝的な視点を含むものや、『セイコーエプソン・国内販売会社創立』、『セイコーエプソン国内販売会社破綻そして再建・方向転換』、『セイコーエプソン国内販売再建 : EPSONブランド確立』、『セイコーエプソン国内販売会社、成長の階段を駆け上がる』、『セイコーエプソン・国内市場成熟と成長への突破口模索』など、企業の国内販売戦略や組織運営の歴史、挑戦と克服の過程を詳細に記したものが多数ある。これらの著作は、日本企業の経営史や産業史を研究する上で貴重な資料となっている。

木村登志男氏は、長年にわたり日本の主要企業であるセイコーエプソンとその関連会社で経営の要職を歴任し、企業成長と発展に貢献しただけでなく、退任後は教育者として実務経験に基づいた知見を分かち合い、後進の育成にも尽力した人物である。

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