木村重信

木村重信：美術史家としての波瀾万丈な生涯と多大な貢献

木村重信（1925年-2017年）氏は、日本の美術史に多大なる貢献を果たした著名な美術学者です。民族芸術学と近現代美術史を専門とし、大阪大学名誉教授、京都市立芸術大学名誉教授、兵庫県立美術館名誉館長などの要職を歴任しました。その経歴は、学究の探求心と、文化への深い愛情、そして行動力に満ち溢れています。

生い立ちと若き日の経験

京都府綴喜郡で宇治茶問屋の家に生まれた木村氏は、幼少期から豊かな自然と文化に触れながら成長しました。商業学校卒業後、学徒動員によって名古屋高等商業学校を繰り上げ卒業し、陸軍予備士官学校に入学。終戦を迎えるまで、兵役生活を送りました。戦後、京都大学文学部哲学科に進学、美学美術史を専攻し、美術史家としての道を歩み始めます。

美術史家としての活躍

京都市立美術大学講師を経て、1956年から1957年にはソルボンヌ大学民族学研究所に留学。帰国後は、京都市立芸術大学、大阪大学で教鞭を取り、後進の育成に力を注ぎました。

彼の活動は、大学での教育にとどまりませんでした。国立国際美術館長、兵庫県立美術館長として、日本の美術界をリードする役割を担い、美術館の運営や展示企画に尽力しました。また、民族芸術学会名誉会長として、学界でも重要な役割を果たしました。

木村氏の研究対象は多岐に渡り、特にアフリカやオセアニアの美術、そして日本の近現代美術に造詣が深かったことが知られています。世界各地へのフィールドワークを精力的に行い、その経験を基にした多くの著作を発表しました。

知られざる学術探検

木村氏の行動力と企画力は、学術探検への参加にも表れています。1967年から1968年にかけて行われた「京都大学 大サハラ 学術探検」では、総隊長を務めた山下孝介氏とともに、この大規模な探検を企画しました。民間企業からの寄付によって資金調達を実現し、探検隊の成功に大きく貢献しました。この探検は、のちに書籍やテレビ番組となり、大きな反響を呼びました。

1985年から1986年には「大阪大学 南太平洋学術調査・交流事業」の委員長を務め、南太平洋地域を調査しました。この事業も大阪大学の創立50周年記念事業として企画され、南太平洋の文化と自然に関する貴重な記録を残しました。

出版活動と受賞歴

木村氏は、数々の著書を発表し、美術史研究に貢献しました。その著作は、専門性の高さだけでなく、分かりやすさと魅力的な語り口で読者を魅了しました。主な著書として、『アフリカ美術』『美術の始源』『はじめにイメージありき 原始美術の諸相』などがあり、その多くは現在も読み継がれています。

彼の業績は高く評価され、毎日出版文化賞、大阪文化賞、勲三等旭日中綬章など、多くの賞を受賞しています。

家族との絆

木村氏の兄は、太宰治『パンドラの匣』の底本となった日誌の書き手である木村庄助氏であり、その日誌の編纂にも携わったという事実も、彼の生涯を語る上で重要な要素です。また、弟には歌人の木村草弥氏がいます。

木村重信氏の生涯は、学問への飽くなき探求心、文化への深い愛情、そして行動力に満ちたものでした。彼の功績は、日本の美術史研究に大きな足跡を残し、これからも多くの人々に影響を与え続けるでしょう。

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