木目込人形

木目込人形：古都の雅を今に伝える伝統工芸

木目込人形は、桐塑（とうそ）または木を素材とした人形の一種で、別名として賀茂人形、賀茂川人形、柳人形とも呼ばれます。その最大の特徴は、人形本体に衣服の皺や模様の形に沿って彫られた溝（筋彫り）に、布の端を目打ちなどで押し込み、まるで衣装を着ているかのように仕立てる技法にあります。この技法こそが「木目込む（決め込む）」という名前の由来となっています。

人形の構造には、全身が桐塑でできているものと、頭部を別に製作して胴体に取り付けるものがあります。頭部を別にする場合でも、ガラス製の眼を用いることは稀で、描き目による表現が一般的です。

木目込人形の歴史

その起源は、1739年に京都の上賀茂神社に仕えていた高橋忠重が、祭器の柳筥（やなぎばこ）の余材を用いて人形を制作し、古い衣装の裂を貼り付けたことに遡ります。後に高橋忠重は神職を辞し、人形作りに専念。その技術は代々受け継がれ、特に3代目の大八郎は卓越した技量で、文政・嘉永年間（19世紀前半）にかけて数々の名作を生み出し、「大八人形」として広く流行しました。

第二次世界大戦後には、「木目込雛」としてガラスケース入りの雛人形セットが登場し、また、型抜きされた練り物製のものが量産されるようになりました。

多彩な人形の種類

木目込人形は、雛人形や七福神といった伝統的な人形に加え、干支飾りや観賞用の手鞠など、様々なモチーフで制作されています。

加茂人形

加茂人形は、加茂川人形とも呼ばれ、高橋忠重およびその子孫によって制作された人形です。現存数は非常に少なく、3センチメートルから10センチメートルと非常に小さいのが特徴です。全身が柳などの木で作られており、人間味あふれる表情が魅力です。

江戸木目込人形

江戸木目込人形は、木目込人形が正徳年間に江戸に伝わり、独自の改良が加えられたものです。京都の木目込人形と比較して、やや痩せ型で目鼻が小さいのが特徴です。頭部は桐塑または素焼きで作られています。

木目込人形は、その繊細な手仕事と、時代を超えて受け継がれる美しさで、日本の伝統工芸として今もなお多くの人々を魅了し続けています。

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