未成年 (ドストエフスキー)

『未成年』の概要

フョードル・ドストエフスキーが1875年に発表した長編小説『未成年』（ロシア語原題:Подросток）は、彼の後期の五大長編作品の一つとして位置づけられています。この作品は特に難解とされ、多くの読者が手を出しづらい印象を持っています。ドストエフスキーの作品を通じて知られている『罪と罰』や『白痴』、また『カラマーゾフの兄弟』と並ぶ重要な作品ですが、一般的な知名度はそれほど高くなく、他の作品と比べると手に取る人が少ないのが現状です。

物語の構成

『未成年』は一人称の告白形式をとり、主人公のアルカージイの内面を深く探求しています。ドストエフスキーはこの作品を「自分のために書かれた偉大な罪人の告白」と位置付け、未成年者がどのようにして世の中に出ていくのかという叙事詩を意図しています。この手記の中で、主人公は探求や希望、失望、悲しみ、そして更生の物語を綴っています。

この作品は『悪霊』と『カラマーゾフの兄弟』の間に執筆され、これらの作品の前日譚として読み取られることが多いです。特に聖人マカール老人の登場は、後に『カラマーゾフの兄弟』に登場するゾシマ長老の基となったとされています。

執筆の背景とテーマ

ドストエフスキーが本作を執筆することになった主要な要因は、彼の以前の作品『悪霊』における「スタヴローギンの告白」の削除にあったと考えられています。この削除された内容と同様のテーマを持つ本作は、一人称の手記という形をとっています。また、作品中に登場するマトリョーシャとオーリャというキャラクターの悲劇的な運命や、誕生や家庭における複雑な人間関係が描かれ、ドストエフスキー自身の若き日々とも照らし合わせて読むことが可能です。

登場人物たち

• - アルカージイ・マカーロヴィチ・ドルゴルーキー: 主人公であり、貴族と農奴の私生児。理想の人生を追求し、財を築くことを夢見ています。
• - ソフィヤ・アンドレーエヴナ: アルカージイの母で、内縁の妻として生きる辛さを抱えています。
• - マカール・イワーノヴィチ: アルカージイの父で、信仰深い老人として描かれています。
• - アンドレイ・ペトローヴィチ・ヴェルシーロフ: アルカージイの実の父で、貴族ではありますが、裕福ではありません。
• - カテリーナ・ニコラーエヴナ・アフマーコワ: アルカージイが恋心を抱く女性で、多くの陰謀に絡まっています。

日本における評価と出版

日本において『未成年』は、長らく絶版状態でしたが、2007年以降の復刊を契機に再び脚光を浴びました。また、様々な翻訳が存在し、特に最近の亀山郁夫訳は大変好評です。しかし、テーマの不明瞭さや構成の複雑さゆえに作品論も多くはありません。これらの点が、今もなおドストエフスキーの文学世界の奥深さを物語っています。作品に込められた深い思想を理解するには、何度も読み返すことが求められるでしょう。

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