未来惑星ザルドス

未来惑星ザルドス (1974) - 不条理と哲学が織りなすカルトSF

『未来惑星ザルドス』は、ジョン・ブアマンが監督・製作・脚本を手掛け、ショーン・コネリーとシャーロット・ランプリングが出演した1974年のアメリカ合衆国・アイルランド合作のSF映画です。一見難解で不条理にも見える世界観の中に、社会構造、人間の存在意義、生と死といった深遠なテーマが織り込まれており、公開当時は賛否両論を呼びましたが、現在ではカルト的な人気を博しています。

あらすじ

舞台は2293年の未来。人類は不老不死の特権階級「エターナルズ」と、死すべき運命を持つ「ブルータルズ」に二分されています。エターナルズは「ボルテックス」と呼ばれる理想郷に住み、ブルータルズは荒廃した土地でエターナルズのために食料を生産する、という支配-被支配の関係が築かれています。

両世界を隔てるのは見えないバリア。唯一の交流手段は「ザルドス」という巨大な石像です。ザルドスは神としてブルータルズに崇拝され、貢物と引き換えに、選ばれた戦士「エクスターミネーターズ」に武器を与えます。エクスターミネーターズはザルドスの言葉に従い、ブルータルズを虐殺し人口を調整しています。

エクスターミネーターズのリーダーであるゼッドは、ある時、ザルドスに潜入しボルテックスへと侵入します。そこで待ち受けていたのは、エターナルズのメイ。彼女はゼッドを捕獲し、テレパシーによる尋問を試みますが、ゼッドの記憶は遮断されており、核心に迫る情報は得られません。エターナルズたちはゼッドを観察対象として生かしておき、その間にゼッドはエターナルズの社会システムを目の当たりにします。

ボルテックスは中央コンピューター「タバナクル」によって管理され、エターナルズは不老不死を享受していますが、思考は常に監視され、反逆的な考えを持つ者には罰が与えられます。理想郷として建設されたボルテックスでしたが、エターナルズは目的を失い、無気力な状態に陥っていました。そんな中、ゼッドと出会ったエターナルズの中には、彼を救世主とみなす者も現れます。

ゼッドは、実はエターナルズの一人、アーサー・フレインによって創造された存在でした。フレインは、エターナルズに「死」を取り戻させるために、遺伝子操作によってゼッドを生み出したのです。コンスエラはゼッドを危険視し排除しようとしますが、ゼッドはメイやフレンド、そして彼を支持するエターナルズの協力によって生き延びます。やがてエターナルズたちの間には、かつて失われた性欲や原始的な衝動が蘇り始めます。

ゼッドはタバナクルの核を破壊し、ボルテックスのバリアを消滅させます。死を渇望していたエターナルズたちは、ゼッドに殺されることを望みますが、ゼッドはためらいます。そこへエクスターミネーターズが侵入し、エターナルズを虐殺し始めます。エターナルズは死を受け入れ、滅びていきます。

ゼッドはコンスエラと共に逃避行を続け、ザルドスの残骸の中で子供を産み育て、やがて老いて死を迎えます。ラストシーンは、二人の骨と錆びた拳銃、そして手形が映し出され、物語は幕を閉じます。

制作の背景

監督のジョン・ブアマンは、当初『指輪物語』の映画化を企画していましたが、製作費の問題で実現しませんでした。その代わりに、自身のオリジナル作品として『未来惑星ザルドス』を制作することにしました。当初主演を務める予定だったバート・レイノルズが降板したため、ジェームズ・ボンドのイメージ脱却を目指していたショーン・コネリーが起用されました。

独特な世界観と哲学的なテーマ

『未来惑星ザルドス』は、その奇抜なビジュアルと難解なストーリーから、賛否が分かれる作品です。しかし、その奥には、社会の在り方、人間の存在意義、生と死、そして知識と暴力といった、普遍的なテーマが隠されています。不老不死という理想郷の歪み、支配者と被支配者の関係、そして人間の本質を問いかける本作は、観る者に深い印象を与えます。

カルト的な人気を誇る本作は、SF映画の新たな可能性を切り開いた作品として、これからも語り継がれていくでしょう。

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