末吉橋 (鶴見川)

末吉橋の詳細解説

末吉橋は、神奈川県横浜市鶴見区と川崎市幸区の境界を流れる鶴見川に架かる道路橋です。この橋は、地域住民の生活を支える重要なインフラであるとともに、周辺地域の歴史と発展を物語る存在でもあります。

地理と交通

鶴見川は北西から南東へと流れ、末吉橋はその流れに沿って架かっています。右岸は横浜市鶴見区上末吉、左岸は川崎市幸区小倉に位置していますが、すぐ下流には横浜市鶴見区江ケ崎町が広がっています。橋の周辺には、上流約1.2kmに鷹野大橋、下流約1.6kmに新鶴見橋が架かっており、交通の要衝となっています。

末吉橋は、神奈川県道14号鶴見溝ノ口線と神奈川県道140号川崎町田線の重複区間の一部を担っています。右岸の「上末吉交差点」、左岸の「末吉橋交差点」は、交通の結節点として機能しています。鶴見溝ノ口線は、鶴見駅から中原区方面へ、川崎町田線は、川崎駅から綱島街道方面へと交通を誘導しています。また、上末吉交差点を直進すると環状2号線に接続し、新横浜方面へのアクセスも可能です。このため、末吉橋周辺では慢性的な渋滞が発生しており、特に川崎駅方面からの左折待ちの渋滞は、最大で460mに達することがあります。

末吉橋を経由する路線バスは、川崎鶴見臨港バスによって運行されています。川崎駅西口と綱島駅を結ぶ川51系統、鶴見駅東口と江ケ崎を結ぶ鶴11系統が利用者の足となっています。バス停は、左岸に「末吉橋」、右岸に「末吉橋西詰」が設置されています。また、横浜市営バスも右岸に「末吉橋」バス停を設けていますが、こちらは橋を渡る便はありません。

鶴見川の左岸には国土交通省の末吉橋水位観測所があり、1944年から観測が続けられています。この観測所は、河川の安全管理に重要な役割を果たしています。なお、横浜市内には、中区の大岡川にも同名の橋が架かっています。

歴史

末吉橋の歴史は古く、正確な架橋時期は不明ですが、1881年の地図には橋の存在が確認できます。鶴見川と多摩川は、かつて「暴れ川」として知られ、度々水害を引き起こしていました。1907年の多摩川の溢水による鶴見川左岸の被害を契機に、鶴見川の治水は長年の課題となりました。1938年の豪雨では、鶴見川の氾濫により1200戸以上が浸水する被害が発生し、国費による河川改修が決定されました。

左岸の小倉地区は、明治時代から大正時代にかけてトマト栽培が盛んで、ケチャップ工場も存在しました。鶴見川を利用した水運も活発で、末吉橋には製品の積み下ろし場が1940年頃まで設置されていました。右岸の上末吉地区も、戦前は農業地帯でしたが、戦後は京浜工業地帯の発展とともに急速に宅地化が進みました。

1950年には、末吉橋の上流側半分が架設され、1964年には下流側半分が完成し、現在の姿となりました。この時の橋は、車道4.5m×往復各1車線、両側に幅1.5mの歩道を持つ、総幅員13.3mの橋でした。

架替事業

竣工から50年以上が経過し、老朽化と歩道の狭さが課題となっていた末吉橋は、2015年より架け替え事業が開始されました。横浜市と川崎市の共同事業として、横浜市が事業主体となり、両市が費用を半分ずつ負担しています。2014年の点検では健全度IIと判定されましたが、洗掘により橋脚の基礎が露出していることが判明し、2016年の再点検では健全度IIIと判定され、架け替えが急務となりました。

新しい橋は、車道幅が3.25m×往復各1車線、左岸の末吉橋交差点には右折車線（幅3.0m）が加わります。右岸の上末吉交差点の右折車線は30mから60mに延長され、一部が橋梁部にかかります。両側には、既設橋の2.5倍の幅である3.75mの歩道が設けられ、総幅員は18.8mに拡幅されます。橋脚は4基から2基に減らし、よりスムーズな河川の流れを確保する設計です。

架け替え工事は、大成建設・東洋建設の共同企業体が担当し、2019年から2029年までの10年計画で進められています。工事は、非出水期の11月から5月にかけて行われ、2026年には新橋の架設、2029年には仮橋や作業構台の撤去が完了する予定です。

まとめ

末吉橋は、横浜市と川崎市を結ぶ重要な橋であり、その歴史と現状は、地域の変遷を映し出す鏡でもあります。架け替え事業によって、より安全で快適な交通インフラへと生まれ変わることが期待されます。

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