末松正樹

末松 正樹（すえまつ まさき）の生涯と業績

末松正樹は、1908年8月28日、新潟県新発田市に生まれました。彼の芸術の道は、1930年に旧制山口高等学校を卒業した後に始まりました。この時期、彼は上京し、逓信省東京中央電話局で働く傍らで、アーティスティックな探求心を育んでいきました。

特に1933年、レニ・リーフェンシュタールが出演した映画『聖山』に触発され、ドイツの前衛舞踏「ノイエ・タンツ」に興味を持つようになったのが、彼の美学にも大きな影響を与えました。このように、舞踊や映画という異なる表現を通じて、彼の視野は広がっていきました。

1939年、彼は舞踏家に同行してパリへ渡りますが、第二次世界大戦の勃発後もその地に留まります。しかし、ドイツの進駐を受け、彼はマルセイユに避難し、現地の領事館で勤務します。この逃避行の間、1944年にペルピニャンで捕虜として拘留され、軟禁状態の中で数百枚のデッサンを制作します。この厳しい環境での制作活動は、彼の作風を抽象へと大きくシフトさせました。

1946年に日本に帰国した後は、『みずゑ』や『美術手帖』といった美術誌に執筆や翻訳活動を精力的に行い、フランスの現代美術の動向を日本に紹介しました。彼の個展は1951年にタケミヤ画廊で開催され、その後も1954年に再び欧州を訪れ、群像表現から地中海の光を題材にした抽象表現に取り組むようになります。

1953年からは多摩美術大学で教鞭を執り、1969年からは翌年にかけて同大学の長代行としても活躍しました。その後、多摩美術大学での教育活動は、後の美術家たちにとっても大きな影響を与えました。彼の教育方針は、芸術的な表現の多様性を重視し、学生たちが自身のスタイルを発展させることを助けるものでした。

末松正樹の仕事は、日本の洋画界において重要な役割を果たしただけでなく、舞踏や映像といった他の芸術形式との交流を通じて、彼の作品には独自の世界観が表現されています。彼の影響力は、彼が生涯を通じて築いたネットワークや多岐にわたる活動によって、今なお評価されています。彼の作品や思想は、後の芸術家たちにインスピレーションを与え続けることでしょう。

彼に関する著作や展覧会も数多く、特に『戦争と美術と人間 : 末松正樹の二つのフランス』や『天井桟敷の父へ』などは、彼の生涯と作品について深く掘り下げたものとなっています。また、さまざまな展覧会も開かれ、その際の図録も多く出版されており、彼の芸術の理解を深める材料となっています。

末松正樹は、1997年4月28日に惜しまれつつこの世を去りましたが、その影響力は現在も健在です。彼の作品や教育活動を通じて、彼は日本の洋画界において偉大な存在として記憶されています。

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