本場ぢょしこうマニュアル

『本場ぢょしこうマニュアル』（ほんばぢょしこうマニュアル）は、日本の漫画家・有間しのぶ氏のデビュー作であり代表作の一つとして知られる四コマ漫画です。1982年からおよそ8年間にわたり、講談社の『週刊ヤングマガジン』にて連載されました。単行本は全4巻が刊行され、その後2004年には再編集版となる『本場ぢょしこうマニュアルSELECTION』も出版されています。

漫画作品の特徴

女性作家である有間氏が、女子高生のリアルな生態を赤裸々に描き出したギャグ漫画です。その絵柄は、細く抑揚の少ない、ある種投げやりにも映る独特な描線で、落書きのように愛らしい少女たちを描くスタイルが特徴的です。これを四コマ漫画という形式に落とし込んでいます。

物語には多数の少女たちが名前を持ち、それぞれ詳細なキャラクター設定が与えられ、各話で主役を務めます。特に本作が革新的だったのは、従来の美少女中心の漫画では脇役や描かれることすらほとんどなかったであろう、体型や外見に特徴のある少女たち（例えば肥満体型や色気がないとされるタイプ）を敢えて主役に据え、彼女たちを単なるデフォルメされた存在ではなく、一人ひとりが確固たる人格を持つ存在として丁寧に描いた点にあります。

四コマ漫画の形式を採用しているため、明確な物語としての大きな流れや一貫性はほとんどありません。その代わりに、登場人物たちのキャラクター性の一貫性によって作品が繋がれています。連載期間は約8年に及びましたが、作中のキャラクターたちは年を取らない設定で描かれました。内容は女子高校における日常の他愛もない出来事が中心に描かれています。しかし、物事を大きくデフォルメするのではなく、むしろ現実の女子高生たちの言動や雰囲気を細部まで忠実に再現することで、ギャグとしての臨場感と迫真性を生み出しています。

さらに、個性豊かな少女たちが時に見せる本音と建前を赤裸々に描き分けることにより、人間の心に普遍的に存在する喜びや悲しみ、自尊心や嫉妬、愛情や憎悪、そして寛容さと差別意識といった、相反する感情や関係性が、時として残酷なまでのリアリティをもって提示されています。

主な登場人物（漫画）

物語を彩る個性的な登場人物たち。

先生方
小川先生: 担任の先生で、メガネをかけており、結婚して小さな子供がいます。
山田先生: 若く独身。性格も容姿も良く、生徒から非常に人気があります。
家庭科の先生: 非常に口うるさく、頻繁に説教をします。特に男女交際については厳しく、自身がオールドミスであることから、生徒にからかわれることも多いです。
美術の先生: 登場回数は少ないですが、セクハラをする描写があります。
体育の先生: 典型的な熱血漢タイプ。単純な性格で、生徒にからかわれることもありますが、恋愛には比較的寛容です。
生徒たち
大谷君: 作中では女子校の生徒たちの間で話題の工業高校の男子生徒。クラスのスター的存在として頻繁に名前が出ますが、実際に登場することは稀です。
せい子: 肥満体型の女子高生。しばしばクラスメイトから茶化されますが、その存在感は大きく、時にはヤンキーな生徒さえも圧倒します。体重にまつわるエピソードが多く、その子やよしこと共に登場することが多いです。
その子: 色気がないと評される女子高生で、「年増女」と呼ばれたりします。三つ編みがトレードマーク。真面目な性格ですが、生真面目さではよしこに及びません。せいこやよしこと一緒に登場する機会が多いです。
よしこ: 非常に生真面目な女子高生で、生徒の中で唯一メガネをかけています。典型的な優等生で、風紀や規律に厳格です。先生が校則の説明をする際の模範キャラクターとして登場することが多く、ヤンキーや外見の良い生徒からは敬遠されがちですが、勉強面で頼られることもあります。

映画化

本作は『本場ぢょしこうマニュアル初恋微熱篇』のタイトルで、1987年 3月21日に東映により映画化されました。同時上映は『ビー・バップ・ハイスクール高校与太郎行進曲』。東京近郊の女子高校を舞台に、3人の少女の初恋や友情といった悩みを、原作の雰囲気を踏まえつつも、より明るく描いています。

キャスト

沢木みちこを工藤夕貴、落合広実を白島靖代、加藤良子を佐藤恵美が演じました。主要な生徒役以外にも、伊藤かずえ、しのざき美知、渡辺千秋らが出演。先生役には上杉祥三、原田大二郎らが名を連ねています。当時、伊藤かずえとしのざき美知を除く女子高生役の女優の多くは、実際に現役の高校生世代でした。

スタッフ

監督は中田新一、脚本は斎藤博と中田新一が担当しました。音楽は鷺巣詩郎。企画には坂上順、和田徹、河瀬光らが参加しています。

製作背景と描写

東映の「春休み公開ヤング番組」として企画され、監督の中田新一は岡田茂東映社長の招聘により本作を含む3本の映画を東映で手掛けました。製作発表会見では、主演の工藤夕貴が当時高校生らしい奔放な一面を見せ、話題となりました。

撮影は東映東京撮影所を中心に、神奈川県横須賀市や東京の竹下通り、表参道といった実際の街でも行われました。劇中には、当時の女子高生の日常や会話が描かれますが、性に関する赤裸々な会話や、下着姿、ブルマー描写など、当時の時代背景を反映したやや過激な描写も含まれており、現代の基準では困難な表現も見られます。

登場人物の部屋にはジェームズ・ディーンやジェニファー・コネリー、中森明菜といった当時の人気スターのポスターが飾られるなど、細部にも当時の雰囲気が反映されています。また、当時の女子高生の間で話題になり始めていた高校女子サッカー部も描かれ、泥だらけのグラウンドでのシーンなどが登場します。エンドロールで流れる楽曲は、当時人気だったおニャン子クラブの楽曲を彷彿とさせるものでした。

受賞歴

本作とその他の作品で、第9回ヨコハマ映画祭にて脚本の斎藤博が脚本賞を、落合広実役を演じた白島靖代が最優秀新人賞を受賞しています。

外部リンク

本場ぢょしこうマニュアル - マンガ図書館Z
本場ぢょしこうマニュアル初恋微熱篇 - KINENOTE
本場ぢょしこうマニュアル初恋微熱篇 - MOVIE WALKER PRESS

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