ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎行進曲

『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎行進曲』：青春の熱き咆哮と、撮影秘話

1987年3月21日、日本の映画館で『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎行進曲』が公開されました。きうちかずひろの人気コミックを実写化した、痛快青春映画シリーズの第3作目です。前作『高校与太郎哀歌』の大ヒットを受け、製作された本作は、前作を上回るスケールとアクションで観客を魅了しました。

ストーリー：愛徳高校と無期停学組の激突

本作では、愛徳高校の生徒と、無期停学処分を受けた不良グループの抗争が描かれます。前作からの主要キャラクターに加え、新たなヒロインやライバル校の登場により、物語はさらに複雑でスリリングな展開を見せます。原作コミックの複数のエピソードを基に構成されたストーリーは、笑いとアクションが絶妙にブレンドされた、まさに痛快青春劇です。

原作エピソードと、映画独自の展開

映画のストーリーは、原作コミックの複数の巻からエピソードが引用されています。主要なエピソードは、高校与太郎行進曲、突発性恋愛乱気流、角刈仁義恋泥棒、高校生恋色一代男、不良少年無頼控など。一方で、原作にはない映画独自の展開も取り入れられています。特に、前作のヒロイン、泉今日子（演：中山美穂）は、交換留学生としてアメリカに留学するという設定で物語から姿を消します。中山の出演シーンは冒頭と回想シーンのみと、シリーズを通しての彼女の活躍はここで幕を閉じます。

キャスト：個性豊かなキャラクターたちが織りなす人間ドラマ

本作には、仲村トオル、清水宏次朗らお馴染みのキャストに加え、新たなキャラクターも多数登場します。新たなヒロイン、如月翔子役には五十嵐いづみが抜擢され、宮崎萬純演じる三原山順子と共にWヒロイン体制を築きます。また、前作で活躍した小沢仁志や土岐光明も、本作では新たな役柄で出演しています。それぞれのキャラクターが持つ個性と魅力が、物語に深みを与えています。

撮影：危険と隣り合わせの、熱き現場

本作の撮影は、1987年1月10日にクランクイン。実働33日間というタイトなスケジュールの中で、数々の困難を乗り越えて作品は完成しました。主要なロケ地は、前作に引き続き静岡県清水市。清水駅前銀座商店街や静岡鉄道などが撮影協力として参加しました。しかし、撮影現場では危険な場面も少なくありませんでした。清水ロケでは、金属バットが仲村トオルの顔に当たり怪我をする事故が発生。また、土岐光明は電車が迫る線路で危険なスタントを演じ、命がけの撮影となりました。クライマックスの金属工場での撮影では、五十嵐いづみが大型プレス機に巻き込まれるという危険なシーンがあり、スタントマンの高瀬将嗣の機転により大事故は免れましたが、現場は緊迫感に包まれました。撮影現場には地元の暴走族が多数集結するなど、まさに過酷な状況での撮影となりました。

スタッフ：熱意と才能が結集した制作陣

監督の那須博之をはじめ、スタッフにはベテランから若手まで、多くの才能が集結しました。脚本の那須真知子は、原作の絵柄を活かしつつ、映画として面白い脚本を書き上げることに苦労したと語っています。また、音楽は埜邑紀見男と都志見隆が担当。主題歌はビー・バップ・少年少女合唱団が歌う「ビー・バップ・シンドローム」です。

興行収入と、シリーズへの影響

本作は、前売り券が前作を大きく上回るなど、公開前から大きな期待が寄せられていました。春休みを含む3週間の興行期間で、大きな成功を収め、シリーズの人気を不動のものとしました。映画の大ヒットは、原作コミックの売上にも大きく貢献。原作コミックは1000万部を突破するほどの人気となりました。

『仁義なき戦い』へのオマージュ

本作は、黒澤明監督作品へのオマージュとして『仁義なき戦い』を彷彿とさせる要素が散りばめられています。広島弁のセリフや、劇中に登場するポスター、俳優陣など、様々な形で『仁義なき戦い』への敬意が表現されています。

そして、次のステップへ

『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎行進曲』は、青春の熱さと、危険と隣り合わせの撮影現場のリアルさを伝えた作品と言えるでしょう。この作品の大ヒットは、続くシリーズ作品にも大きな影響を与え、日本の青春映画史にその名を刻みました。 2023年12月には東映シアターオンラインで配信され、新たな世代の視聴者にも本作が届けられました。

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