本山原人

本山原人とは

本山原人（もとやまげんじん）は、1980年代から1990年代にかけて、主に名古屋大学の学生（以下、名大生）の外見的な特徴や行動様式を揶揄して用いられた言葉です。この言葉は、南山大学の学生が発行したミニコミ誌から生まれ、当時の名大生のファッションセンスや大学生活に対する姿勢を風刺的に表現していました。

語源

「本山」とは、名古屋市営地下鉄の本山駅を指します。2003年に名古屋大学駅が開業するまで、本山駅は名大生の最寄り駅であり、多くの学生がこの駅から大学へと通っていました。

「原人」という言葉には、時代遅れのファッションセンスや、リュックサックを背負い前かがみで歩く姿といった、名大生に共通するとされた特徴が込められています。

本山原人の特徴

本山原人の特徴は、発祥となった南山大学のミニコミ誌では、「七三分けの髪型、銀縁メガネ、時代遅れのチェックシャツ、母親が持たせてくれた傘、運動音痴を連想させる運動靴」と描写されました。また、他のメディアでは、「色あせたジーンズ、チェックのボタンダウンシャツ、くたびれたスニーカー」といったファッションを好み、真面目で遊び下手な人物像として描かれています。

これらの特徴は、当時の名大生が必ずしも全員当てはまるわけではありませんでしたが、一部の学生に共通するイメージとして定着しました。

発祥と経緯

本山原人の言葉は、1982年に南山大学の学生が発行したミニコミ誌『Campus Life 南山』の特集記事「私は本山原人を見た！！衝撃の名大潜入ルポ」が初出です。この特集では、垢抜けない身なりの名大生を皮肉ったイラストが掲載され、本山原人という言葉が広まるきっかけとなりました。

ただし、この特集記事は、名大生の知的な側面やおしゃれな学生もいることを指摘するなど、一方的な批判に終始するものではありませんでした。

名大生の反応

本山原人という言葉に対し、名大生は反発しました。名古屋大学の学生新聞『名古屋大学新聞』では、「名大生＝”本山原人”！？」という大見出しで特集を組み、名大生から「南山のひがみ」「流行に惑わされないだけ」といった反論が寄せられました。

しかし、一方で、1983年の名大祭で実施されたアンケートでは、回答者の6割以上が「本山原人」という言葉を自覚しており、名大生の間でもその言葉が浸透していたことが伺えます。また、名古屋大学消費生活協同組合が発行した『名大スピリッツ：名古屋大学を知る本』では、「♂名大生のこと」と定義され、「純血種は「名古屋大学」と大きく書かれたTシャツを着て繁華街を出かける」と描写されるなど、自虐的なユーモアも交えて受け入れられていた側面もあります。

分析

予備校のチューターは、名大生は入学後に次第に「本山原人」化していくと分析しています。その理由として、女子学生の少なさや広大なキャンパスといった大学の環境を挙げています。また、他大学出身の学生からは、国立大学特有の閉鎖的な雰囲気や、名大生が地域のエリートであるという意識が、外へ冒険する意欲を失わせている可能性も指摘されています。

名大生のファッションセンス

本山原人のイメージが定着した当時の名大生のファッションは、ジーンズにチェックシャツ、ショルダーバッグというスタイルが定番でした。また、名古屋大学消費生活協同組合によれば、かつては「チェックのカッターに紺のGパン」が「制服」のように扱われていた時期もあったといいます。

しかし、時代とともにそのイメージは変化し、2004年の毎日新聞の記事では、「名大ブランド」という言葉で、ヨレヨレのTシャツやチェックシャツ、ジーンズ、スニーカーやビーチサンダルといった、よりカジュアルなスタイルが名大生のファッションとして紹介されています。

評価

名古屋大学は、本山原人のイメージは誇張された面があり、名大生自身もそのイメージにとらわれていた側面があったと分析しています。また、大学紛争から時間が経過し、名大生が自らのアイデンティティを見失っていた時期に、隣接する南山大生からそのイメージを指摘されたため、名大生も過剰に反応したと考察しています。

本山原人という言葉は、1980年代から1990年代にかけて用いられましたが、実際には1980年代以前から存在していた可能性も指摘されています。

まとめ

本山原人は、名古屋大学の学生に対する一種のステレオタイプであり、そのファッションや行動様式を揶揄した言葉です。しかし、この言葉は、名大生自身のアイデンティティを問うきっかけとなり、大学全体を巻き込んだ論争を引き起こしました。本山原人の言葉は、現代においても名大生の自己認識や大学の歴史を語る上で重要な要素となっています。

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