本行寺 (津山市)

延寿山 本行寺

延寿山 本行寺（えんじゅざん ほんぎょうじ）は、岡山県津山市西寺町に静かに佇む日蓮宗の古刹です。かつては美作地方における日蓮宗の重要な布教拠点として栄華を誇りました。その歴史は室町時代後期に遡り、度重なる困難を乗り越えて現在に法灯を繋いでいます。旧本山は京都の妙覚寺にあたり、達師法縁（繁珠会）に連なります。また、境内には、福祉受給者の生存権を訴えた朝日訴訟、通称「人間裁判」の原告として知られる朝日茂氏の墓所が静かに佇んでいます。

歴史

寺伝によれば、本行寺の創建は室町時代後期の文明年間（1469年-1487年）に遡ります。守兵部保重氏、そして堅田頼国氏とその子である為頼氏らが発願し、京都妙覚寺12世日寮の高弟にあたる照知院日立上人を開山に迎えて建立されました。開山に迎えられた日立上人は、この美作の地に日蓮宗の教えを広めるべく尽力されたと伝えられています。

一度は勢いを失い、衰退した時期もありましたが、その後、備前国（現在の岡山県東部）金川にある妙国寺から日繕上人を招いたことにより、寺勢は再び振るい、中興を果たしました。これは本行寺の歴史における重要な転換点と言えるでしょう。

江戸時代に入り、慶長9年（1604年）に津山城の築城が始まると、それに伴う城下町の整備のため、本行寺は現在の地に移転を余儀なくされました。当初は南新座に仮の寺地を定めた後、最終的に元和2年（1616年）に現在の西寺町の地に寺基を移し、再興されたのです。この移転と再興は、津山藩の城下町形成という大きな歴史的背景の中で行われました。

しかし、その後の寛文年間（1661年-1673年）に起こった日蓮宗に対する弾圧、いわゆる寛文法難によって、本行寺もまたその影響を受けました。寺院は破却され、一時廃寺の憂き目に遭うという苦難に見舞われます。この時期、全国の日蓮宗寺院が厳しい状況に置かれた中で、本行寺も例外ではありませんでした。

長らく再建が待たれましたが、江戸時代後期の文政5年（1822年）、19世日運上人の代において、ようやく現在の本堂と庫裡が再建され、寺院としての機能を回復させることができました。この再建は、檀信徒の厚い信仰心と尽力によって成し遂げられたものと考えられます。その後も伽藍の整備は進められ、23世日浄上人の代には鐘楼門が再建されるなど、現在の本行寺の姿が形作られていきました。

境内の伽藍

境内に残る伽藍の中でも特に注目されるのは、本堂、庫裡、そして鐘楼門です。また、津山市内では数が少なく貴重とされる三間堂の形式を持つ建築物も有しています。これらの建物は、度重なる災難や時代の波を乗り越え、寺院が復興を遂げた歴史を今に伝えています。

本堂：文政5年（1822年）、19世日運上人の代に再建された、現在の本行寺の中心となる建物です。
庫裡：本堂と同様、文政5年（1822年）に19世日運上人によって再建されました。寺院の日常を支える重要な建物です。
* 鐘楼門：23世日浄上人の代に再建されたと伝えられており、本行寺の威厳を示す建造物です。

また、前述の通り、境内の一角には朝日訴訟の原告である朝日茂氏の墓所があります。この墓所は、日本の社会福祉の歴史において重要な意味を持つ出来事と、この寺院が静かに寄り添ってきたことを物語っています。

延寿山 本行寺は、美作地方の日蓮宗の歴史を刻み、様々な困難を乗り越えて法灯を護持してきた由緒ある寺院です。その伽藍や境内の墓所は、地域の歴史や人々の営みを静かに見守り続けています。

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