本郷義則

本郷義則について

本郷義則（ほんごう よしのり）は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将で、宇喜多氏や島津氏に仕官していました。彼は特に弓馬の技術に秀でており、薩摩日置流の祖としても名を知られています。また、通称は本郷伊予守です。

生涯とその背景

本郷義則の先祖は、播磨国を本拠地に持つ守護大名・赤松氏と繋がりがあるとされています。初めは玉川氏と名乗っていたという逸話も残っています。義則は隣国である備前国の大名、宇喜多秀家の家臣として仕官しました。

関ヶ原の戦いとその後

慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いでは、宇喜多秀家が西軍として参戦しましたが、惨敗を喫します。その後、秀家は西軍であった島津氏を頼り、薩摩国へと落ち延びました。その際、義則は数少ない家臣の一人として秀家に従い、彼の信任を受けました。しかし、秀家が島津氏によって保護された後も、慶長8年（1603年）には島津忠恒（後の家久）が家康の元へ秀家を引き渡すことになるなど、波乱に満ちた時代を過ごしました。

秀家が薩摩の地を去る際には、義則は彼と共に島津家に託された家臣としての運命を背負います。彼は島津氏に仕えた当初は外様であり、冷遇を受けていましたが、後にその実力が認められます。

弓馬の腕前の披露と忠誠

ある日、家久が義則の弓馬の才能に興味を持ち、彼の腕前を観覧しようとしました。しかし、三原重庸が用意した馬が悪馬であったため、家久は自らの乗馬「小澤」を貸しました。この結果、義則は高い技術を披露し、家久の心遣いに感謝し涙を流しました。この出来事をきっかけに、義則は島津家に対し強い忠誠を誓いました。

また、鹿児島城下の火災の際、義則は自ら騎乗し、敵の襲来に備えて先に到着します。彼は「新参者である自分が殿の側にいるべきではない」と機転を利かせ、譜代の家臣が出るべきだと考えて行動しました。このような機転の良さが評価され、彼の名声は高まりました。

日置流弓術とその後

義則は日置流弓術を修め、家久の弓術の師範を務めることになります。ある際、家久に随行し清藤に赴く道中、義則は遠矢を二回射ち、それぞれ3町58歩以上飛ばすことに成功します。このことを喜んだ家久は、射った場所に杉の木を植えることを命じ、後にこの場所が「大迫畑の遠矢の跡」として史跡となりました。

義則には嗣子がいなかったため、彼の弓術の弟子である東郷重尚が祭祀を担いました。このように義則の教えは、後の世代にもしっかりと引き継がれていきます。

終焉と後の評価

義則が亡くなった際、家久は彼のために和歌を詠みました。

「なれなれて　見し世の春も　かきりそと　うつろふ花の　あとのかなしき」
「梓弓　やよひの空に　鳴く雁も　さらす別の　跡したふらん」

彼の人物像は『本藩人物誌』においても称賛されており、勤勉で弓道に専心していたことが評価されています。義則の人生は、武士としての矜恃や忠誠心、そして弓術への情熱を物語るものであり、今なおその名は語り継がれています。

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