日置流

日置流（へきりゅう）

日置流は、古流の逸見流を学んだ日置弾正政次（または正次）によって確立された和弓の流派です。日置弾正は室町時代の人物とされているものの、その詳細な経歴には多くの不明点があり、いくつかの伝説や神話が存在します。

流派の特徴

日本の弓術は大きく「歩射」、「騎射」、「堂射」に分類されます。これに対し、今日の弓道界では実用的な弓術を重視する「武射」と、儀礼的な配置を重視する「礼射」に分けられています。日置流は武射の系統に属し、実利を追求した射法が特徴です。

日置流と小笠原流との大きな違いは、射法そのものです。日置流では弓を体の斜め前に構え、「斜面打起し」を行います。この独特の射法は、視野を広げることを目的としており、実際の戦闘での効率性を重視しています。弓道が広く普及する中で、弓の引き方や基本動作においては、正面構え（正面打起し）が教育の中で主流とされてきましたが、日置流における斜面打起しは、より実戦的なスタイルと言えるでしょう。

歴史的背景

日置流の起源は、日置弾正政次に遡ります。彼は吉田重賢を高弟として受け入れ、以降日置流は主に吉田氏によって継承されてきました。吉田氏は室町時代の戦国時代に活躍した家系で、流派の技術体系は多岐にわたります。日置流は江戸時代に入ると、各藩で弓術派が盛んに活動し、特に弓術の専門家が藩主に仕官する状況が見られました。

日置流の各派

日置流の各派には多くの系譜があり、以下のような主な流派が存在します:

• - 大和日置系統（吉田流）: 日置弾正から伝承された吉田重賢を祖とする流れ。吉田家によって代々受け継がれました。
• - 出雲派: 吉田重政の嫡子、重高を祖としており、技術の継承が行われています。家伝は独特の価値を持ちます。
• - 雪荷派: 吉田重勝を祖とする流派で、多くの武将とのつながりがあります。特に細川幽斎との交流が有名です。
• - 竹林派: 石堂竹林坊を祖とする流派で、仏教の影響を受けた思想や技術が特徴です。

今なお日置流は多くの地域で練習が行われており、特に印西派は現代の弓道において重要な位置を占めています。弓道の技法や射法についての研究も進んでおり、科学的な視点からの検証が行われています。日置流の文化や射法は、武士たちが生き抜いた歴史の中で受け継がれてきた貴重な遺産と言えるでしょう。これからも日置流が日本の弓道界で重要な役割を果たしていくことが期待されます。

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