本間利彦

愛知県出身の元オートバイロードレースライダー、本間利彦（ほんま としひこ）は、1967年3月24日に生まれました。

幼い頃からオートバイに強い関心を持ち、二輪車免許を取得する以前から名古屋市のアトランタ・ツーリングクラブに所属していました。免許取得後には、その卓越したライディングスキルで周囲を驚かせ、早くから非凡な才能の片鱗を見せていました。

1986年、19歳で全日本ロードレース国際A級クラスにデビューします。特に印象的だったのは、富士スピードウェイで開催された国際格式レース「スーパースプリント'86」のGP250ccクラスでした。雨の中で行われた第1ヒートでは、当時のトップワークスライダーであったカルロス・ラバード選手やシト・ポンス選手といった強豪を退けて見事に優勝。第2ヒートは15位に終わったため総合順位は5位でしたが、この鮮烈な走りはヤマハ関係者の注目を集め、後のキャリアに繋がる大きな転機となりました。この時期、彼はウカワR&Mコメットチームに在籍し、故・山川守氏の指導を受けていました。

1987年、本間選手はヤマハ発動機と正式に契約を結び、全日本ロードレース選手権GP250ccクラスに参戦します。当時ヤマハのエースだった奥村裕選手が負傷したことから、当初使用していた市販レーサーTZ250からワークスマシンのYZR250へと急遽スイッチする機会を得ました。この最高峰マシンを駆り、ホンダのエースである清水雅広選手と激しいチャンピオン争いを展開。最終的にシリーズランキング3位を獲得し、ヤマハ勢では最上位の成績を収めました。

そして1988年、本間選手は全日本ロードレース選手権GP250ccクラスにおいて念願のチャンピオンに輝きます。前年の活躍が認められヤマハワークス入りを果たしますが、このシーズン序盤、ヤマハは全日本選手権にワークスマシンYZR250を投入せず、新型の後方排気型市販TZ250（市販レーサーと区別するためTZ250改などと呼ばれました）で参戦するという異例の体制でした。性能面で不利が予想される状況下ながら、本間選手はスポット参戦した日本GPでは見事ポールポジションを獲得するなど、その実力で結果を出します。全日本選手権第3戦での優勝が決定打となり、ヤマハはシーズン途中から再びワークスマシンYZR250を本間選手に与えることを決定。このマシンを得た彼は快進撃を続け、見事にシリーズチャンピオンの栄冠に輝きました。

1989年は、前年チャンピオンとしてワークスマシンYZR250を与えられ、シリーズ連覇を目指しました。しかし、シーズン途中に負った怪我が響き、後半戦で失速。連覇はならず、ランキング2位に終わりました。

1990年からは、国内最高峰クラスである全日本ロードレース選手権GP500ccクラスへ転向します。このクラスでもトップライダーの一人として活躍し、1991年にランキング6位、1992年にランキング4位と着実に成績を向上させました。

1993年シーズンは、特に記憶に残る年となりました。当時台頭著しかった若手ライダー、阿部典史選手と熾烈なタイトル争いを展開。最終戦までもつれる激しい戦いを繰り広げましたが、惜しくも敗れ年間ランキング2位となりました。

1994年、国内におけるGP500ccクラスが廃止されたことに伴い、選手としての第一線から退きヤマハのテストライダーに転身します。しかし、テストライダーとしてマシン開発に携わる傍ら、再びレースの舞台に立つ機会もありました。

1995年には、ロードレース世界選手権の日本グランプリ500ccクラスにスポット参戦。予選では、ポールポジションを獲得したケビン・シュワンツ選手に次ぐ2位という結果を残し、その高いポテンシャルを世界に示しました。

1996年には、3年ぶりに全日本ロードレース選手権にフルエントリー。GP250ccクラスに参戦し、ランキング5位を獲得しました。

1997年以降は再びヤマハ発動機のテストライダーとして、主にワークスマシンの開発を担います。1998年には、ロードレース世界選手権の250ccクラスにもスポット参戦し、フランスGPで9位に入賞するなどの成績を残しました。その後、2002年まで長年にわたりヤマハのワークステストライダーとして、多くのマシン開発に貢献しました。

2003年をもって、選手およびテストライダーとしてのキャリアに終止符を打ち、引退しました。全日本ロードレース選手権でGP250ccチャンピオンを獲得し、国内最高峰クラスでもトップ争いを演じるなど、日本のロードレース史にその名を刻んだライダーです。

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