本願寺出版社

本願寺出版社：西本願寺の出版活動を支える歴史と現在

本願寺出版社は、京都市下京区に位置する浄土真宗本願寺派（西本願寺）の出版部門です。その歴史は古く、明治時代から活版印刷による出版活動を開始し、現在に至るまで、浄土真宗の教えの普及に貢献しています。1963年設立の本願寺出版協会を起源とし、新聞、雑誌、書籍、DVDなど多様な媒体を通じて、仏教に関する情報を発信し続けています。

明治時代からの歩み：印刷技術の導入と出版物の展開

本願寺は明治5年、長崎の印刷技術者である本木昌造の協力を得て、寺院内に印刷所を設立。明治9年には「本山日報」の刊行を開始し、活版印刷による出版事業の礎を築きました。その後、「教誨一瀾」（のちの本願寺新報の前身）、「ブディストマガジン」（のちの大乗の前身）といった雑誌を創刊し、時代の変化に合わせて出版物を充実させてきました。

これらの活動は、単なる情報発信にとどまらず、信徒への教化伝道という重要な役割を担っていました。特に「ブディストマガジン」創刊期には、のちに直木賞作家となる司馬遼太郎氏（当時、福田定一氏）が関わっていたことでも知られています。

昭和38年：本願寺出版協会の設立と出版活動の拡大

信徒への文書伝道の充実を目指して、昭和38年には「本願寺出版協会」が設立されました。「本願寺新報」「大乗」といった定期刊行物の編集発行を引き継ぎ、一般向けの書籍出版も開始。「しんらん文庫」というレーベルを立ち上げ、浄土真宗に関する書籍を数多く刊行しました。「仏事のイロハ」は45万部という発行部数を記録するなど、広く社会に影響を与える出版物も輩出しています。

昭和48年には真宗教団連合編集の「法語カレンダー」の発行を開始。昭和57年には本願寺の聖典編纂事業による『浄土真宗聖典』の発行も開始し、原典版、注釈版、現代語版など、様々な形態の聖典を提供することで、より幅広い層への理解促進に貢献しました。

出版物の多様化：書籍、映像、グッズ

本願寺出版社は、書籍の出版にとどまらず、DVD作品（アニメ仏典物語など）、仏教讃歌などの楽曲CD、さらには一筆箋などのグッズも手がけています。時代に合わせてメディアを駆使し、浄土真宗の教えを多角的に発信する姿勢を貫いています。

組織変更と名称変更

本願寺出版社は、浄土真宗本願寺派の組織再編に伴い、昭和51年4月に「浄土真宗本願寺派出版部」、平成元年4月に「浄土真宗本願寺派宗務事業局本願寺出版社」と名称変更を重ね、その後、現在の「浄土真宗本願寺派本願寺出版社」となりました。

定期刊行物

本願寺出版社は、現在も数多くの定期刊行物を発行しています。その中には、明治時代から続く歴史を持つ「本願寺新報」や、司馬遼太郎氏とゆかりのある「大乗」といった、長年にわたって親しまれてきた雑誌も含まれています。これらの雑誌は、浄土真宗の教えや寺院の活動、社会問題など、多様な情報を掲載し、読者に幅広い情報を提供しています。他に「宗報」「季刊せいてん」「伝道」といった定期刊行物も発行し、それぞれ異なる役割を担っています。

主な刊行物

本願寺出版社では、学術的な研究書から、一般向け解説書、子ども向けの絵本まで、多様な書籍を刊行しています。代表的なものとして、『浄土真宗辞典』『浄土真宗聖典註釈版』といった専門性の高い書籍や、『仏事のイロハ』『浄土真宗はじめの一歩』といった入門書、さらに、絵本やDVD作品なども含まれます。これらの刊行物は、それぞれの読者のニーズに応えるよう、内容と形式を工夫して作られています。

まとめ

本願寺出版社は、明治時代からの長い歴史の中で、出版を通して浄土真宗の教えを広める活動を続けてきました。時代の変化に合わせて出版物を多様化させ、現代社会に合わせた情報発信を積極的に行うことで、これからも浄土真宗の理解と普及に貢献していくでしょう。

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