本鶴来駅

本鶴来駅（ほんつるぎえき）

本鶴来駅は、かつて石川県石川郡鶴来町、現在の白山市にあたる地域に位置していた、北陸鉄道能美線の鉄道駅でした。能美線がその歴史に幕を閉じたことに伴い、この駅もまた廃止されています。

駅の開業に向けた準備段階、具体的には工事の施行認可を申請した時点では、「古町停留場」という名称で届け出がなされていました。その後、実際に駅が開業を迎えたのは1932年（昭和7年）1月16日のことで、当初は能美電気鉄道の駅として営業を開始しました。

本鶴来駅は、開業から廃止までの間に運営主体が何度か変わっています。能美電気鉄道の運営期間は比較的短く、1939年（昭和14年）8月1日には金沢電気軌道に吸収合併され、同社の駅となりました。さらに、1941年（昭和16年）8月1日には、現在の北陸電力の前身にあたる北陸合同電気が金沢電気軌道を合併し、駅の管理権が移ります。そして、翌年の1942年（昭和17年）3月26日には、事業の譲渡により北陸鉄道の一部となりました。このように、開業後わずか10年ほどの間に、駅は3つの異なる会社の傘下を渡り歩いたことになります。

北陸鉄道の駅となって以降も長らく営業を続けていましたが、モータリゼーションの進展などにより、能美線の利用者数は減少傾向をたどりました。その結果、能美線全線が廃止されることが決定し、1980年（昭和55年）9月14日に路線とともに本鶴来駅も廃駅となりました。これは、開業からおよそ48年が経過した後の出来事です。

駅の構造は、地上に設けられた単式ホームが一つと、それに沿う一本の線路からなるシンプルな配置でした。特に興味深い構造として、隣接する鶴来駅までの間、約300メートルの距離では、北陸鉄道石川線の線路がすぐ隣を並行して走っていました。この区間だけを見ると、あたかも複線区間であるかのように見えましたが、本鶴来駅に石川線側のホームは設けられていませんでした。

駅が位置していた周辺地域は、住宅が多く建ち並ぶ比較的賑やかな場所でした。また、この地域に古くから農業用水として利用されている七ヶ用水も近くを流れています。

能美線の廃止から長い時が経ち、本鶴来駅のあった場所は現在、当時の鉄道駅の面影を残すものはほとんどなく、地域住民が利用する生活道路の一部として整備され、活用されています。しかしながら、駅に併設されていたとみられる、かつて貨物を取り扱っていた際に使用された上屋の建物が、現在も倉庫として別の用途で利用されており、かつての駅の存在をかすかに伝える遺構となっています。

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