札幌市交通資料館

札幌市交通資料館

札幌市交通資料館は、北海道札幌市南区にある、札幌の公共交通の歴史と発展を伝える展示施設です。この資料館は、札幌市交通局の外郭団体である札幌市交通事業振興公社によって運営されており、札幌市営地下鉄南北線の自衛隊前駅のすぐ南側、高架下のスペースを利用して設置されています。

資料館設立のきっかけは、1972年（昭和47年）に検討された札幌市電の全廃計画でした。この計画を機に、それまで札幌の交通を支えてきた貴重な車両や電装品、その他歴史的な資料を散逸させることなく保存しようという動きが生まれました。市内の既存施設に保管されていた資料を集約し、交通博物館を建設する構想が持ち上がりましたが、その後市電の一部区間と車両基地の存続が決まり、現在の場所に施設が設けられることになりました。

1975年（昭和50年）2月には、さっぽろ雪まつりの期間中に仮設展示として公開され、同年5月に正式な開館に至りました。開館後も展示内容は拡充され、札幌市営地下鉄の初期型である1000形電車や、未来の高速鉄道技術を研究するために開発された第四次高速試験車「すずかけ」などが収蔵車両に追加されました。

2007年（平成19年）7月21日には「市営バス展示室」が新設され、市営バス車両2台が新たに保存・展示対象となりました。この時期には、保存状態が悪化していた一部の展示物の整理も行われています。

資料館は、2017年（平成29年）9月から大規模なリニューアル工事のため長期休館に入りました。約6年半の期間を経て、2024年（令和6年）4月27日のプレオープンを経て、同年5月1日に全面リニューアルオープンを果たしました。リニューアルによって、本館の屋内展示スペースは従来の290平方メートルから471平方メートルへと約1.6倍に拡張され、展示構成も刷新されました。

リニューアル後の館内は、複数のテーマ別コーナーで構成されています。「ウェルカムコーナー」では、札幌市営地下鉄や市電のパネルが設置され、運転士になりきって写真撮影ができるエリアなどが用意されています。「ヒストリーコーナー」では、大正時代に製造された「木製22号車」の実物車両を核として、かつての切符や車両の部品、運行機器など、札幌の交通の歴史を物語る資料が展示されています。「体験コーナー」では、精巧に再現されたジオラマの中を地下鉄車両の模型が走る様子を見ることができ、その模型を自分で運転するシミュレーション体験も楽しめます。また、「札幌市営交通の誇りコーナー」では、日々の安全かつ定時運行を支える職員たちの様々な仕事内容が、パネルなどを通じて紹介されています。

屋外展示場には、数多くの実物車両が展示されており、エリアごとに分けられています。「第1展示場」にはバス車両4台と地下鉄車両2台、「第2展示場」には札幌市電の車両が10両、「第3展示場」には地下鉄車両が3両それぞれ配置されています。かつては、進駐軍から払い下げられたレッカー車や、トラックを改造した架線作業車といった珍しい特殊車両も展示されていました。初期の屋外展示では、一部の路面電車が高架に対して垂直に配置されていましたが、後にすべての路面電車が高架と平行になるように配置が整理されました。

札幌市交通資料館は、多様な実物車両の展示や貴重な資料を通して、札幌の街の発展とともに歩んできた公共交通の歴史と技術を学ぶことができる施設です。車両の変遷、運行を支える技術や人々の仕事、そして未来への展望まで、幅広い視点から札幌の交通システムへの理解を深めることができるでしょう。

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