朱常瀛

朱常瀛（しゅ じょうえい）は、1597年に明の万暦帝の七男として生まれ、初代の桂王となった人物です。母は李敬妃で、彼が生まれた同月に亡くなっています。彼の生涯は、不幸と混乱に満ちたものでした。

1619年、朱常瀛は呂氏と結婚しましたが、呂氏は結婚したその月に急死するという悲劇に見舞われました。1627年には湖南衡陽に領地を移しましたが、その地でも問題が発生します。官吏の黄用と高道素が王府建設の公金を横領し、強度不足の材料を使ったため、1629年には王府の屋根が崩落し、多数の死者を出す大惨事となりました。この事件で、不正を働いた役人たちは処刑されました。

1636年、新たな王府が完成したものの、平穏な日々は長く続きませんでした。1643年には、張献忠の勢力を避けて広西へ逃亡を余儀なくされ、1645年に広西梧州で病死しました。彼の死後、三男の朱由𣜬が桂王位を継ぎました。しかし、彼の人生はそれで終わらず、後に四男の朱由榔が南明最後の皇帝、永暦帝として即位した際に、朱常瀛は「礼宗」の廟号と「体天昌道荘毅温弘興文宣武仁智誠孝端皇帝」という長い諡号を追贈され、興陵に埋葬されました。

朱常瀛の家族もまた、数奇な運命を辿りました。正室の呂氏は死後、孝欽端皇后と追号されました。継室の王氏はヘレナという洗礼名を持ち、永暦帝によって皇太后と尊称されました。側室には、范氏、馬氏（マリアという洗礼名）、孫氏がおり、范氏は世子朱由𣜬の母であり、馬氏は永暦帝の母として皇太后と尊称されました。

彼の子供たちは、男子7人と女子2人でした。長男と次男は夭折しましたが、三男の朱由𣜬は桂王を継ぎ、四男の朱由榔は永暦帝となりました。五男と六男、そして七男は戦乱で命を落としました。また、女子には安化長公主と広徳長公主がいました。朱常瀛の一生は、明王朝末期の混乱期を象徴するものであり、彼自身だけでなく、その家族もまた激動の歴史に翻弄されたと言えるでしょう。彼の生涯は、明朝の滅亡という大きな歴史の流れの中で、一人の皇族がどのように生きたかを物語る貴重な記録となっています。

朱常瀛の物語は、以下の文献に詳しく記述されています。

『明史』
『南明史』
* 『崇禎長編』

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